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インタビュー
2022年9月1日

中国で右肩上がりのカレー需要に大連から応える美味しさと品質管理を徹底し、カレーを人民食へ

大連好侍食品有限公司 

総経理

島津 英明氏(しまず・ひであき)

 1968年5月8日広島県廿日市市生まれ。岡山大学工学部卒業。1992年4月ハウス食品株式会社に入社し、品質管理、委託生産管理、資材購買、生産技術等を歴任し、2012年大連赴任。2022年4月総経理就任。現在に至る。

大連好侍食品有限公司について

 中国ハウスグループ2箇所目の生産拠点です。2012年大連堀江大和屋食品有限公司と資本関係を結び、2016年に大連好侍食品有限公司に社名変更しました。

今日までの歩み

 本社であるハウス食品株式会社は1913年に設立しました。中国へ進出したのは1997年、カレーハウスレストランを上海に開業したのが始まりです。その後2002年上海、2006年北京に法人を設立しました。年々カレールーの中国国内での需要が高まる中、大連堀江大和屋食品有限公司の工場を引き継ぐ形で大連に生産拠点を置くことになりました。

 私が赴任した2012年、CoCo壱番屋用カレーソースを生産開始しました。その後2014年に「百夢多咖喱(バーモントカレー)」を生産開始しました。2015年には業務用フレークカレー、2018年には業務用1kg百夢多咖喱及び「爪哇咖喱(ジャワカレー)」の生産を開始しました。

現在中国で販売している商品

 大連で生産している商品は100g百夢多咖喱、220gカレー醤、業務用フレークカレー、業務用1kg百夢多咖喱、業務用爪哇咖喱、冷凍カレーソース、レトルトカレーソース、粉末カレー調味料、混ぜご飯の素等です。その他に他拠点生産で200g百夢多咖喱、100g咖王咖喱、番茄紅烩調料(ハヤシ)、西趣(シチュー)、味嘟嘟咖喱(レトルトカレー)等も販売しています。

「バーモントカレー」について

 自社商品の「バーモントカレー」は日本で1963年に発売開始しました。辛さをおさえ、りんごとはちみつでマイルドな「甘口」に仕上げた“カレーは辛くて子どもは食べられないもの”という当時の常識をくつがえした画期的な商品でした。

 中国では2005年には百夢多咖喱の発売を開始し、2014年から大連で生産しています。

中国と日本のバーモントカレーの違い

 中国の方が好まれる様、日本のバーモントとは少し違った仕様にしてあります。中国の煮込み料理に良く使用される八角というスパイスを多めに配合して、色も中国の方が好まれる黄色味を強くしたものになっています。ですから日本から赴任された方がこちらのバーモントを食べられた時には驚かれることも多いです。

「ジャワカレー」について

 「ジャワカレー」は1968年、南の島ジャワのイメージにふさわしい爽快な辛さと刺激のある味わいの大人向けのカレーとして発売を開始しました。スパイシーで深みのあるカレーです。

 中国では「咖王咖喱」という名前で発売し、百夢多咖喱と比べると、見た目も味わいもより日本のカレーに近いです。中国は辛いものが好きな方も多いので、これらの方の需要にもお応えすべく激辛味を発売しました。花椒の香りを効かせたカレーです。

自社の強み

 美味しく品質の良い製品を中国の皆さんに食べていただけるよう社員一丸となって取り組んでいることです。また環境保護活動として、ISO14000を取得し取り組んでいます。具体的にはCO2の削減を目標に省エネ活動や廃棄物の削減とリサイクル活動等に取り組んでいます。また、植樹や町のクリーンアップ活動等の社会貢献活動にも取り組んでいます。

大連に生産拠点を置くメリットやデメリット

 中国全土に商品を流通させるために、現在は上海、浙江、大連に生産拠点を置いています。大連は従業員が集めやすく離職率が低いことがメリットとして挙げられます。

 デメリットは、寒い地域のため暖房費がかさむことです。

他の食品工場とは異なる注意点や、大変な点はありますか。

 カレーを生産し始めた当時は近くに住宅が無かったのですが、数年前に近くにマンション群が建設され、匂いや騒音には気を付けています。私たちとってカレーの香りは良い香りに感じても、近くに住んでいらっしゃる方たちにとってはそうでない場合もあります。

工場設備、自動化について

 クッキング釜等の主要設備は日本のメーカーの物を使用しています。中国の人件費が上がっている状況下で、省人化は不可欠です。原料の自動計量投入、自動充填包装等、自動化設備を導入し、省人化を進めております。製品の箱詰めには半自動ロボットをハウス食品のカレー工場では当社が初めて採用しました。2018年に設立した浙江好侍食品は当社よりもさらに自動化が進んだ設計となっています。

コロナウイルスの影響

 大連ではもちろん影響がありましたが、特に今年の上海ロックダウンは中国ハウスグループにかなり大きな影響がありました。上海の会社は営業も生産もできなくなり、それを大連と浙江でカバーしなくてはなりませんでした。その為に中国の全社員が協力し、サプライヤーや物流業者の方の助けを借り、製品供給にはほとんど影響せずに乗り越えることができました。

中国の家庭へカレーを浸透させるために行っている戦略

 日本と中国で人気のアニメとコラボしたキャンペーンを実施したり、店頭での試食や陳列を目立つように工夫したりしています。過去には大手商業施設内でカレー王国と称したイベントを開催し、お子様へのカレー教室で実際にカレーを作って食べて頂いたりしました。

日本は一般的にカレーはご飯にかけて食べますが、中国の食卓ではどうですか。

 日本と同じように、ご飯にかけるカレーライスとして食べられることも多くなってきましたが、大皿料理を多人数でシェアする文化の中国では、カレーも具材が多めの煮物や、炒め物等おかずのうちの一品として召し上がられる場合も多いようです。

カレーのオススメのアレンジ方法などはありますか。

 私のお勧めは大連の新鮮な海鮮を使用したシーフードカレーや、中国ではポピュラーな羊肉を使ったラムカレーです。

ご自身と中国との関わり

 2011年に3か月ほど上海ハウスへ研修に行ったのが最初です。中国は想像とは異なり、近代化が進んでいました。電子決済やシェア自転車、デリバリーなどが早くから導入され、変化のスピードが速いことに非常に驚きました。

入社のきっかけ

 当時はまだバブル期の全盛期だったため、実はあまり就職について真面目に考えていませんでした。食事は暮らしに欠かすことができませんので食品会社を選べば、将来不景気になっても影響は少ないだろうと思い、小さいころからカレーやシチューで馴染みのあったハウス食品株式会社に入社しました。

日本で仕事をする際と異なる点

 中国の法規は厳しく、また頻繁に改定され、過去に遡って実行される場合もあるので、情報収集には細心の注意を払わなければなりません。

 また、一人の仕事の守備範囲も広いので、広い視野と様々な知識と経験が必要になると思います。その為まだまだ修行中の身です。

大連での思い出、好きな場所

 日本では同じ会社の人間と関わることがほとんどでしたが、大連では異業種の方との繋がりができました。良き友人として食事会やゴルフ等を楽しみ、情報交換をしたりと、異国の地でもストレスを溜めずに暮らすことができています。

 また美味しいものを食べることが好きなので、開発区駅近くの飲食街「五彩城」は私の大連ライフに欠かせない場所となっています。

これまで注力された取り組み、また今後注力したい取り組み

 製品の美味しさと品質にはこだわってきました。直接お客様の口に入る製品ですので今後も安全で安心できる製品を製造してまいります。

 また、社員の生活と環境を守ることは社の責任として今後も注力してまいります。

今後の目標

 先ずは『カレーを人民食にする』をスローガンに取り組んでいきます。

 そしてゆくゆくは中国での総合食品メーカーとなり、さらに美味しく笑顔になれる製品をご提供できるように活動してまいります。