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インタビュー
2022年11月1日

大連からイノベーションを創造するソフトウェア企業新たな価値を上乗せしクルマの在り方自体を変えていく

海納新思智行服務有限公司

(Hynex Mobility Service)

執行副総経理

一ノ瀬 純一郎氏(いちのせ・じゅんいちろう)

 1974年北海道生まれ。小学生は岩手で育ち、中学生から埼玉に移動。98年Honda入社、国内営業、北米研修を経て2003年からGlobalモデルの商品企画業務を担当。09年から11年武漢東風Honda駐在、一時帰国後、16年から二度目の駐在。北京2年、広州2拠点での2年を経て、22年4月から中国5拠点目の大連Hynexへ赴任。

ハイネックス モビリティサービスについて

 ハイネックス モビリティサービス(英語:Hynex Mobility Service Co., Ltd. 中国語:海納新思智行服務有限公司)は、2020年7月1日に日本・本田技研工業株式会社(以下、Honda)の中国拠点である本田技研工業(中国)投資有限公司とNeusoft Reach Automotive Technology Co., Ltd. (以下、NSR)のJV(ジョイントベンチャー)として営業開始したソフトウェア開発企業です。

設立の目的

 社名のHynexとはHyper+Nextの意味です。社名にも込められている設立の目的は「お客様がまだ想像すらしていない革新的な新価値を誰よりも先駆けて創造し、お客様に未だ経験したことのない新体験をモビリティサービスで提供していく」という事です。

 中国は自動車の世界最大市場であり、中でも電動化、智能化領域においては世界を牽引している事から、Hondaももちろん中国市場を重視しています。

 そこでHonda車両の車載システムであるコネクテッドサービス「Honda CONNECT」を重要なプラットフォームと位置付け、コネクテッドサービスによる価値を質高く・スピーディに提供するために、ソフトウェアにおいて優位性を持つNSRと共に設立しました。

企業の強み

 自動車のハードに強いHondaと、ソフトウェアに強いNSRが手を組み、両社の技術・モノづくりへの想い・文化を融合することから産み出される「無限のモノづくりの可能性」が今のHynexの強みだと思っています。現在様々な領域でその可能性の実現に向けて開発・検討を進めておりますが、Hynexだからこそ開発できる革新的な新価値を早く創造し、お客様にお届けしたいと考えています。

 とは言え今年7月に創設2年目を迎えたまだまだ新しい会社で現在従業員は86人(うち日本人が6人。22年10月末時点)です。若い会社だからこその強み、また様々なバックグラウンドを持った従業員の多様性を活かし、あらゆる事にリスクを恐れず積極的にチャレンジをしていく環境を作ることがまず私のすべき事と考え、日々様々なメンバーとコミュニケーションを深めています。

コネクテッドサービスとは

 車とインターネット、スマホを繋ぐことで広がる新たな自動車サービスの総称です。それによる安全性、利便性などの向上を通して、クルマは更に安心・安全・快適な移動空間へと変化していきます。

 Hondaはこれまで「技術は人のために」そして「人を知ることは、Hondaのものづくりの根源」という創業以来の企業精神のもと、新しい製品の創造や技術の進化に挑戦してきました。そこにコネクテッドサービスによる新たな価値を上乗せすることで、クルマの在り方自体が変わり、お客様の生活の可能性を拡げることができると考えています。

具体的にどのようなサービス?

 車自体の安全性能(衝突軽減技術のみならずカメラやセンサーによる車の周囲状況把握からの事故回避)に加え、インターネットを介して得られる情報(移動中の天候の変化や事故・災害の発生など)を合わせる事でより安全かつ安心快適に目的地に移動することが可能になります。事故などの緊急時には車から直接オペレーターサービスで会話をすることが可能です。

 また車はスマホのアプリとも繋がっているため、アプリから車の状態を確認したり、操作することができます。鍵や窓の状態確認や開閉、エアコン操作ができるほか、クラクションを鳴らしたりライトを光らせる事で駐車場等で車の位置把握も可能になります。更にAIと精度の高い音声認識の活用で、ドライバーと車との会話が実現できるため、車を信頼できる“相棒”のような存在に感じて頂けます。

ターゲットは中国市場のみ?

 現状は中国市場向けのビジネスをメインに展開しており、中国市場の四輪車向けコネクト機能を開発し四輪車に搭載しております。今後、事業環境に変化があった場合には柔軟に対応することを考えています。

中国と日本の車市場の現状

 市場規模とその構成内容に大きな違いがあります。21年の自動車販売実績は中国約2600万台に対し日本は約450万台。そのうち電動車は中国は既に350万台を超えている一方、日本はまだまだこれから。中国の大都市はもちろん、ここ大連でも多くの電動車を目にしますが、日本ではインフラの課題などもありまだまだ普及していません。

コネクテッドサービス分野における中国の状況

 特に中国系の新興自動車メーカー(NIO、小鵬、理想等)は背景にあるITベンチャーの資金力、ソフトウェアの開発力を活かす事で、コネクトを含めた智能化領域では世界の先端を行っていると認識しています。Hynexとしてはコネクテッド領域でHondaならではの新たな価値をお客様に提供することにより、これらの企業に追いつき、追い越していくことが使命だと思っています。

日本メーカーとしての強みとは

 日本のものづくりで長年培われてきた強みは沢山あります。Hondaは車を作り続けて70年。常にお客様の事を中心に考え、お客様の為の車づくりに全力を挙げてきました。そうして培ってきたお客様中心の車づくりの考え方や、あらゆる環境で安心・安全かつ快適に移動することができる開発品質、美しく且つ精緻なデザイン開発力、巧レベルの製造品質は他社に対して優位性があると考えています。

 中国でお客様に認めて頂いてきた「クルマ屋ならでは」の商品性能・安全性・信頼性を更に高めつつ、そこに時代の先を行く新たな提供価値をコネクテッドサービスで上乗せし、お客様の生活の可能性を拡げていくことで、Hondaの競争力を高めていきたいと考えています。

これまで注力した取り組み

 特に印象に残っているのは武漢の東風Honda時代に「中国の新時代の若者向けのクルマ」として開発したJadeの商品企画を中国人の若手スタッフと共に推進したことです。また広州の広汽Honda時代には新しいブランド戦略を推進したことも大きな挑戦でした。商品はもちろん、店舗デザインの制作、ネット直販、斬新なセールスプロモーションなど、全てが初めての経験でしたが、中国人メンバーともに社内一枚岩となって発売準備を進めました。これらの中国拠点で現地スタッフや中国企業と共に仕事をした経験を生かして、大連でも新たなチャレンジに取り組んでいきたいと思います。

大連の印象

 自然が美しく、コンパクトで過ごしやすい街という印象です。また日本との歴史的な繋がりがある建造物なども多いので、先人の生活に思いを馳せながら、市内をよくウロウロしています。またジョギングが趣味なので、市内の海や山、203高地、大黒山などを巡りマイナスイオンを浴びながら大連の自然に触れる事で心が洗われます。

大連で仕事をして感じること

 これまで武漢、北京、広州での経験を経て、今年4月から大連に赴任して半年ほど経ちましたが、人の気質的に安定を求める傾向が強いのかなと感じています。北京や広州、上海などで出会うような「どんどん挑戦していきたい!」という人はやや少ない印象があり、これら大都市の人に対して構えてしまうような雰囲気も時に感じます。

 しかし一人一人の意見を聞いてみると、みな想いを持って仕事をしていることがわかります。

イノベーションを起こす環境づくりのために進めていること

 当初は意見が出づらい雰囲気も感じたのですが、社内で年齢や性別、立場を越えて一つのテーマで議論をし始めると、みな秘めた自分の熱い想いを語り始めてくれます。社員が自分の意見をしっかり言える、そしてそれらの意見を否定するのではなく、更に良いものにするために皆で議論を深め、そのアイディアを早く実現するために各個人が責任を持って業務に取り組むことでイノベーションにつなげていきたい。つまり心理的な安全性を感じられる職場にすることも施策の一つとして進めています。

 まだ改革途中ではありますが、少しずつ社員の考え方が変わり、面白いことに挑戦できる環境に変わってきていると実感しています。新たなメンバーも募集しておりますので、読者の皆様の中にも関心のある方がいらっしゃいましたら是非ご連絡ください!

これからチャレンジしたいこと

 Hynex設立の目的でもある“新価値・イノベーション”を創造し早く形にすることです。自動車業界に囚われることなく、異業種の様々な企業様とのコラボレーションでお客様に喜んで頂けるイノベーションを創造し車に搭載していきたい、と考えていますので「こういう事を自動車でやれないか」と言うアイディア、ご提案などがありましたらいつでもお声がけください!