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インタビュー
2023年3月1日

茶道を通して中日友好の懸け橋に理解と抱擁でコミュニケーション

大連外国語大学日本語学院 副教授

一般社団法人茶道裏千家淡交会 専任講師

茶道裏千家大連同好会 講師

宋 岩氏(Song・Yan)

 1996年7月、大連外国語大学日本語学院を卒業、1999年1月、同大大学院で修士課程修了(専攻は日本言語文学)。同年3月から同大日本語学院で教職に就く。2002年2月、茶道裏千家大連同好会に入会し、2009年、一般社団法人茶道裏千家淡交会の「専任講師」の資格を取得。茶名は「宗岩」。中国人で茶名を得たのは、東北三省で初。札幌市と上田市でも茶道を学び、2019年9月から茶道裏千家大連同好会で講師も務めている。2004年4月から2005年3月まで北星学園大学で、また2010年4月から2011年2月まで長野大学で客座教授。

 2022年9月、裏千家大連同好会は在瀋陽日本国総領事館から在外公館長表彰を受けた。大連外国語大学日本語学院で教える宋岩さんは、同会で茶道の講師も務めている。一般社団法人茶道裏千家淡交会の「専任講師」の資格を持ち、茶名「宗岩」も得ている宋岩さんへ、日本語教育や茶道について聞いた。

――今回の在外公館長表彰は、どのような理由で授賞となったのでしょうか。

 在外公館長表彰は、日本との関係で顕著な貢献を行った個人や団体に対して、日本国大使や総領事が授与する顕彰です。茶道裏千家大連同好会は1997年に設立されて以来、稽古を進めながら、対外的な茶道交流活動も積極的に行ってまいりました。これまで、東北大学や瀋陽師範大学、遼寧大学、大連大学など各大学で、日本茶道のデモンストレーションを行い、さらに遠方では延辺、寧夏、青島などで実施された日本文化節にも招聘された実績がございます。鵬雲斎大宗匠が提唱されている「一碗からピースフルネスを」の実践に励んでまいりました。このような取り組みを、評価していただけたのだと存じます。

――在外公館長表彰を受け、ご感想は。

 深く感謝しております。今までの努力をお認めいただいたばかりか、図らずもこのように晴れがましい栄誉をいただけたことは、光栄の至りでございます。茶道裏千家大連同好会は、設立から25周年を迎えました。私どもにできることは、今後とも皆さまのご期待に添えますよう、お力添えもいただきながら、稽古に励み、微力ではございますが中国に茶の香りを広げ、茶道の精神を中国の皆さまに広め、茶道を通して中日友好の懸け橋となるべく、精進してまいることと存じます。

――なぜ日本語や日本に関心を持ったのですか。

 父の影響です。父は大学の日本語の先生で、私が子供の時から簡単な日本語を教えてくれました。また、日本のことも良く紹介してくれました。そのお陰で、だんだんと日本語や日本に関心を持つようになりました。

――日本語を学び始めたのは、いつからでしょうか。また、日本語学習の思い出は。

 子供の時から日本語が好きでした。学校で日本語を学び始めたのは、中学校からです。単語や文法はあまり難しくないと感じましたが、苦労したところもありました。例えば、文化や考え方が違うと、物の見方も違ってきますね。そのため、良く中国語らしい日本語を話していました。結構、悩んだ時もありました。逆に、言葉から日本文化や日本人の考え方が少し分かってきた時は、うれしかったです。やはり、同じアジアですので、共通したところが多く、日本語は中国語話者にとって、他の言葉より少し楽だと思います。

――日本留学は経験されましたか。

 1997年から1年間、北九州で交換留学を経験しました。ホストファミリーのお母さんとお父さんは親切で、色々な所へ連れて行ってくださいました。テキストで習った言葉が通じない時もあり、失敗談は何回もありましたが、本場の日本社会に触れて、視野を広げることができました。日本や日本人の心が僅かながら分かるようになりました。またこの時、茶道にも触れ始めました。

――いつ頃から大学教員を目指していたのでしょうか。

 中学校に入った時からです。父の影響で、大学の先生にずっと憧れていました。父と同じく、大連外国語大学の先生になりたいと思って頑張っていました。

――現在、大外日本語学院では、どんな授業を担当していますか。

 4年生の上級日本語と茶道の授業を担当しております。授業では、ただ日本語の知識を教えるだけではなく、学生たちの実力を高められるよう工夫しています。

――外国語学習で大切なことや、外国語学習のコツは何でしょうか。

 前に述べたように、文化や考え方によって物の見方や表現も違ってきますね。外国語を習うには、その国の文化やその国の方々の考え方を理解することが大切だと思います。

――初めて茶道に北九州でですか。また、いつ茶道を習い始めましたか。

 1997年、北九州で交換留学している時、日本文化の紹介の一環として、立派な茶室を見学させていただきました。その時、露地の風情、しなやかな着物姿、きれいなお菓子、おいしい抹茶に惚れました。ホストファミリーのお母さんは、裏千家の茶道教室に何十年も通っていますので、一緒に連れて行っていただき、2か月ぐらい稽古をさせていただきました。私の修士論文のテーマは「日本の茶道文化について」でして、1999年1月に大連外国語大学修士論文最優秀賞を受賞しました。その後、2002年に「大連リラ会」の奥様のご紹介で、茶道裏千家大連同好会に入会いたしました。

――茶道の魅力は何ですか。

 難しい質問ですね。茶道の魅力は多すぎます。茶道は、日本の文化の代表といっても過言ではありません。私にとっては、やはり皆さまもご存知の茶道の四規「和・敬・清・寂」です。和は、和し合うこと、お互い同士が仲良くすること。敬は、敬い合うということ。清は、心身ともに清らかであること。寂は、何事にも動じない心を持つこと。漢字の1つ1つが、茶道での心の持ちようを表現しています。茶室において、客は、亭主の気持ちを汲み取り、亭主もまた客を想いながら一心に茶を点てます。それは、ただ一方的な想いだけでは成り立ちません。互いに相手を想い合って、初めて、共にその一時を過ごすことができるのです。そうすると、そのことを自然に感謝したい気持ちになります。そして、それが味わいになり、美味しい一椀となりえます。

――現在、茶道裏千家大連同好会はどのような活動を行っていますか。

 毎週、木曜日、金曜日、土曜日にお茶の稽古をしております。その他に、在瀋陽日本国総領事館や同大連領事事務所のご依頼で東北三省の大学、それから瀋陽ジャパンデー、瀋陽ジャパンウィーク、寧夏ジャパンデー、延辺ジャパンデー、大連ジャパンデー、青島ジャパンデー、ハルピンジャパンウィーク、領事館主催日本サロン、アカシア祭り、ファッション祭りなど、東北三省だけではなく、その他の地域でも茶道紹介の活動に従事しています。また年に2回、社会向けのお茶会として、新年茶会と七夕茶会も開いております。多くの方々に茶道を紹介することに励んでまいりました。

――大外には茶室もあると思いますが、どんな茶室なのでしょうか。

 大外の茶室は「吟風庵」といいます。2004年、茶道裏千家と日本語学院は、茶道を日本語学院の教育に導入することに合意しました。更なる中日文化交流、学生の日本文化理解の促進を図るために、茶道裏千家第15代家元の千玄室大宗匠により、学院へ茶室を寄贈される運びとなりました。2007年4月11日、この「吟風庵」は完成し、記念式典には千玄室大宗匠も日本から参加されました。日本から送付した資材を用いた専門家の設計による茶室は、現在までのところ、中国国内に4か所のみです。大外の茶室は、北京大学、北京外国語学院につづき、3番目に建築された正式な茶室となりました。

――大外での茶道教育につき、教えていただけますか。

 毎年、約150名の日本語を学ぶ学生が履修し、現時点で約3000名近くの学生が受講いたしました。学生は、茶文化の授業を通して、中日文化交流の歴史を学ぶだけではなく、自己修養、また社会人になる前の文化の基礎を習得しています。日本語学院には茶道クラブがあります。卒業生を含め200名以上の学生が所属し、現在は20名が所属し、毎週水曜日に稽古を行っています。すでに、150名以上の学生が、茶道裏千家発行「初級」の資格を取得しています。このように茶室「吟風庵」は、茶文化の授業を実施するためだけの教室にとどまらず、茶道クラブの活動拠点、本格的な日本建築を見学できる場、日本の文化や風習を学ぶ重要な場となっています。茶室の存在は、茶文化を伝えるだけではなく、お茶に興味を持っている方との交流の場にもなっています。

――より良い関係を築くために、中国と日本に必要なことは何でしょうか。

 茶道裏千家淡交会の前副理事長の関根宗中先生の言葉をお借りいたします。「日本は中国のことを兄貴のように尊敬し、中国は日本のことを弟のようにかわいがっていればありがたいです」。

――日本に関心を寄せる中国人、中国に関心を寄せる日本人へメッセージをお願いします。

 外国に関心を寄せるということは、異文化への理解と包容かと思っております。探求心を持ち続け、両国文化の粋を取り入れ、相手の考え方を知ろうとすれば、それがコミュニケーションを取る良い方法かと思います。