Whenever大連

大連ライフをもっと楽しくする日本語メディア

billibilli
インタビュー
2023年10月1日

産業を支えるモータを大連で生産して30年世の中にクリーンエネルギーを創出し、SDGs達成に貢献します。

富士電機馬達(大連)有限公司

中山 陽介氏(なかやま・ようすけ)

1962年兵庫県西宮市生まれ。大学で機械工学を専攻し、1986年富士電機入社。生産技術や工場の生産部門、回転機の事業部などを経て2018年1月大連へ赴任、董事長に就任し現在に至る。

 モータというと何を思い浮かべるだろうか?モータとは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するための機器のこと。産業機器、家電製品、OA機器、自動車など、私たちの身の回りのあらゆる場所にモータは内蔵されている。

 親会社である富士電機株式会社は、今年9月1日で創立100周年を迎えた。現在は、総合電機メーカであるが、創立当時から生産している製品の一つがモータで、非常に歴史のある製品である。富士電機では、主に産業用のモータや発電機、鉄道関係のモータを生産しており、東海道新幹線のモータや山手線の自動扉などにも使われている。

 同社の子会社であり、大連でモータを生産する富士電機馬達(大連)有限公司は、今年大連での生産30周年を迎えた。

 今月は、節目の年を迎えた富士電機馬達(大連)有限公司総経理の中山氏を取材した。

今日までの歩み

 前身の会社である大連富士馬達有限公司を1993年に設立し、2005年に現在の富士電機馬達(大連)有限公司を産業用小型モータの主力工場として立ち上げました。

 中国でモータ生産を始めて今年で30年となります。9月1日には、富士電機株式会社の100周年と中国モータ生産30周年を記念して、従業員全員で記念パーティーをしました。

主力製品

 産業用のモータ(出力45kW以下)とサーボモータです。皆さんの身近で見られるものは少ないですが、ビルやマンションの給水ポンプや工場の換気扇、エアーコンプレッサー、空調機(室外機)など工業用の設備に導入されるケースが多いです。お茶畑の霜防止用のファンや繊維織物機械のモータなど特殊なものもたくさんあります。立ち上げ時は数種類でしたが、その後日本から設備移管を行い、今では3000種類ほどのモータを年間約50万台生産しています。

サーボモータとは

 起動と停止を何度も繰り返す過酷な指示にも正確に対応する、工場の自動化などには欠かせないモータです。自動車工場の多関節ロボットなどの駆動に使われています。サーボは「ご主人様の指示に忠実に応じる」ということから、英語のServant(召使い)に由来します。

大連に製造拠点を置いたのはなぜですか

 30年前は、人件費も安く、その頃から中国にどんどん日系企業が進出してきました。日本からも近く、港も近いので、日本や海外への輸出には好条件の場所と言えます。   

大連に製造拠点を置くメリット/デメリット

 一番のメリットはコストです。日本より人件費も材料費も設備も安価です。ただ中国も人件費はどんどん上がっており、自動化や生産効率を上げないとメリットが出ないのも事実で、最近は自動化設備を積極的に導入しています。

自社の強み

 標準的な汎用モータから、お客様の要求仕様に合わせた特殊な専用モータまで、幅広く、また少量のご注文でも生産できます。製品の85%はお客様専用のモータを生産しており、オーダメイドでお客様に提供できることが最大の強みと思っています。また社内で部品の加工ができる比率(内製化率)が60%以上あり、部品調達も国内調達率が95%と高いので納期にも迅速に対応できるのが強みです。

SDGsの取り組み

 富士電機は、「豊かさへの貢献」「創造への挑戦」「自然との調和」を経営理念に掲げ、エネルギー・環境事業で社会に貢献していくことを経営方針の柱に据えています。

 弊社もクリーンエネルギーの創出、エネルギーの安定供給、省エネ、自動化など、エネルギー・環境技術で価値を生み出しSDGs達成に貢献します。また工場も太陽光発電導入、電力消費量監視システム導入など、CO2排出削減に積極的に取り組んでいます。

 全世界で使われる電気消費量の実に約45%はモータ駆動に使われているといわれています。ですからモータで省エネ化することによる効果は非常に大きいため、今後もより効率の高いモータを供給していきます。

太陽光発電プロジェクト

 工場屋根に約20,000㎡の太陽光パネルを設置し、約15%の省エネが出来ました。更に電力消費量の可視化システムを導入し、ムダな浪費を抑制し、生産工程や設備保全のデジタル化を進め、人と環境に優しく、異常を見逃さない工場づくりを推進しています。

工場の自動化について

 モータの種類が多いので、全自動ラインのような無人化生産は困難ですが、製造工程の一部の自動化や人の作業を助ける簡易自動化、また3K職場(キツイ、汚い、危険)の作業にはロボットを導入し、工場の安全、環境改善にも力を入れています。

他の生産拠点と異なる点

 もとは本社工場(三重県鈴鹿市)の工場をベースに作ってきた工場なので、作り方はほぼ同じですが、富士電機内では最も多い生産量を誇ります。最近は日本でも作っていないような特殊な製品や部品も弊社で生産できるようになりました。

中国赴任は何度目

 赴任は初めてです。日本から中国への機種や設備移管を拡大した1990年代後半から、台湾や大連地区に出張ベースで来る機会が増えました。その後も合理化支援や予算策定業務で大連や販売会社のある上海へ来る機会が増えました。そして2018年より現在の会社に赴任しました。

富士電機へ入社した理由

 子供のころからモノ作りは好きで、大学も機械工学系を学んでいたので、やはり製造メーカに入りたかったというのが一番です。しかし富士電機は何を作っている会社なのかは、ほとんど知りませんでした(笑)。

働く上で大切にしていること

 上司部下の関係です。人の意見はよく聞く、鼻っから反論しないことです。今も部下の提言にはあまり反論することはせず、まずやらせるようにしています。目標だけを明確に提示し、中身は自分で考えて実行し、時には失敗して、学ぶことが一番の成長と思っています。

大連で働いて感じたことは

 海外赴任が初めてだったのでとても不安でしたが、赴任してからも全く違和感を感じず、すぐに馴染むことができました。大連は日系企業も多く、企業間の交流も多いですし、食事、言葉にも不自由しませんのでとてもいい環境です。

 一方、中国の法律や制度があっという間に変わることについては驚きました。ゼロコロナ政策の解消も一瞬でしたよね。それに忠実に対応する中国の人々も凄いなあと感じました。日本ではありえない光景です。決断、指示、実行のスピード感は、ある意味日本人も見習わないといけない部分もあると思います。日本は稟議ばかりでなかなか前に進みませんからね。

仕事の中で印象に残っていること

 やはりコロナ禍ですね。2020年の1~3月は、従業員の隔離や、材料が入荷せず殆ど操業ができず、苦難と不安の時期でしたね。私自身も、一時帰国して戻った際に空港の検査で引っ掛かり、隔離施設に強制的に入れられた時は地獄でしたが、今となっては笑い話です。

仕事のやりがい

 製造メーカですから、良い製品を安く、早く提供できるよう日々全員で努力しています。その成果として、お客様に喜んでいただき、会社も利益が出て、従業員の喜ぶ顔を見られると、とてもうれしいものです。

大連生活で印象に残っていること

 私生活では、中国各地を観光に行けたことはとてもよい思い出です。特に少数民族の多い雲南省は中国とは全く違う雰囲気があり魅力的でした。大連では、市内の古い町並みや路面電車の走っている風景が懐かしい感じがして好きです。

今力を入れて取り組んでいること

 ここ数年は、暗いイメージのあった工場を明るくし、コスト低減活動を強力に進め、新しい設備を導入し、生産性向上、職場環境改善を強力に進めてきました。その結果、会社の経営体質も良くなり、お客様にも従業員にも喜ばれる工場になったと思います。

今後の目標

 中国市場が冷え込み、国内販売が伸び悩んでいますが、生産機種を拡大し、更に省エネ化に貢献できるモータをどんどん拡販し、環境改善への貢献度を上げていきたいです。

 そして、環境と人に優しい社員が働きやすい工場を目指して、取り組んでいきます。