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billibilli
インタビュー
2023年11月7日

大連のナンバーワンホテルを目指し現状打破へ向けて全力で取り組む

大連で唯一の日系デラックスホテルとして、2000年8月より運営を開始している伝統あるホテル・ニッコー大連。今年5月に総経理に就任した竹田明家氏を取材した。

竹田明家(たけだ・あきいえ)氏

 中国での勤務歴13年。マンダリン・オリエンタル・マニラ、アコーホテルズ・グループのプルマン広州、シャングリラホテル西安で勤務経験を持つ。2014年ホテル・ニッコー広州の設立時に入社し、9年間の勤務を経て、2023年5月ホテル・ニッコー大連の総経理に就任。現在に至る。

大連の街の印象

 5月に赴任してきました。夏場はとても過ごしやすい気候で、快適に過ごさせていただきました。当ホテルの日本料理をはじめ、近所には数々の日本食レストランがあります。クオリティは高いですが、料金は抑えられているので助かっています。また、昔の建造物がたくさん残っていて歴史を感じることができます。

 広東での仕事が長く、寒さをあまり経験していないので大連の冬が楽しみです。

大連のホテル業界の特徴

 シーズナリティがはっきりしているマーケットだと思います。

 夏場は避暑地として各省からの旅行客のお世話をさせていただく機会が増加しますが、冬は寒いので、旅行や出張のお客様が少なくなります。

日本のホテル業界の現状

 コロナもひと段落し、世界中からのお客様で賑わっています。円安の影響もあって都心では宿泊費が高騰しています。その背景にはホテル業界の慢性的な人手不足も一因であるようです。ハウスキーパーなどが足りないため、ホテルでは稼働を70-80%程度に抑え、その代わりに単価を上げることで収益を維持していると聞いています。

現在のホテル・ニッコー大連について

 大連唯一の日系デラックスホテルとして、大連を訪れるお客様が安心してご滞在頂けるホテルであり続けることを目指しています。大連市内で有名なホテルの1つであり、コロナ期間中に比べて宿泊数は戻り始めています。

 今年の夏は観光客も増え、満室の日も多くありましたが、改善すべき点も多く見つかりました。現状維持ではなくサービス全体の底上げを図る必要があると感じ、全体の改革に取り組んでいるところです。

なぜ改革が必要?

 ホテルは非日常の体験を提供することで対価をいただくものです。

 お客様は特別な記念日に家族を満足させるためや、会社の重役や顧客をもてなすためなど、ホテルでしか実現できないことを求めてご利用されます。不満な点が多ければ、二度と同じホテルを利用しないというお客様がほとんどだと思います。何度もお客様に選んでいただけるホテルになるために、設備、サービス、食事の内容に至るまで、今よりも高いクオリティーを実現しなければならないと考えています。

コロナ禍の影響ですか

 少なからずあります。特に、幹部を含めた長年仕事を続けているスタッフが3年近くお客様と接する機会を失っていたことの影響は大きいです。コロナ前の学びと感覚を取り戻し、改革に取り組むことは決して簡単ではないとは認識しています。しかし、今後もホテル・ニッコー大連が皆様に愛されるホテルとして存続し続けていくためにも、どこかのタイミングで変革を起こさなければならず、それが今だと思っています。

具体的に実施している改革

 サービス面においては、レストランの品質向上、メニュー刷新などに取り組んでおり、設備面においてはクラブラウンジを改修したほか、客室の改装、エレベーターの交換計画を進めています。

 イベントの開催にも力を入れています。8月には熊本美食フェアを開催し、ホテル内のレストランで中国国内の食材で作った熊本料理を提供しました。以降も日本の地域フェアを積極的に開催していきます。11月は牛肉フェア+ボジョレーヌーボーを企画しています。

 また人事面でも改革に取り組んでおります。

人事改革について

 給与改訂を含む人事制度の見直し、トレーニングの充実を進めています。新規募集と既存の社員両方に対してベースアップを行いました。

 トレーニング方法も改善をしています。例えば今までは幹部スタッフが指示を出しスタッフが現場に出るという仕組みでしたが、今は幹部スタッフが最前線に出るようにし、それをスタッフが見て学ぶというやり方を実践しています。

それはなぜ

 リーダーが自ら現場で士気を上げることで、全体のモチベーションアップに繋がり強いチームが作れると考えているからです。

 経験豊富な幹部のメンバーが自ら率先して動く姿を新しいスタッフに見せて学ばせていくことで、ホテルのサービスレベル全体の改善をしていきたいと考えています。

ご自身がお考えになる「素晴らしいホテル」とは

 お客様とスタッフが互いに尊敬しあい、常に正しい循環が行われているホテルです。実現のために、お客様、オーナー様、スタッフの満足のバランスも大切にしています。

働く中での信条や信念

 出来るだけ多くの時間を現場にいるようにしています。

 サービス業は製造業とは異なり、その場でサービスを提供し対価をいただくという生産と消費が同時に発生する業界のため、現場を見ていないとその品質を把握・維持できないからです。

 そしてトライアンドエラーを反復し、何事にも全力で取り組むように心がけています。実際に目で見て肌で感じたことを元に、素早い決断をし、実行するようにしています。

 朝食一つにおいても、毎日ご飯の硬さやパンの焼き上がりなど、品質を確認し、問題を見つけた場合はその場で改善の指示をするようにしています。

マネジメントにおいて気を付けていること

 総経理という立場ではありますが、一方的に決めつけずに多角的に情報を共有してもらいながら、一緒に最善の方法を模索するようにしています。決定権や責任があるのは間違いありませんが、それによってスタッフが近寄りがたいリーダーではなく、仲間として共に成長できるリーダーでありたいと思っています。明るい未来のビジョンを魅せ続けるのもマネジメントの一つだと思っています。

これまで一番大変だった仕事

 今が一番大変です。

 総経理という立場は今までの仕事とは全く異なります。

 全ての仕事の結果を見届けなければいけないという大きな責任があり、カバーしなければならない業務範囲も多岐に渡りますが、非常にやりがいのある仕事です。

 現在は全体を見渡すべく、いろいろな部署の会議に出席していますが、一人でできることには限界があります。今見ている仕事の一部を人に任せる体制も作っていきたいと考えています。

ホテル業界に入った理由

 ホテル業界に入る前に、旅行会社に勤務していたことがあります。日本人が私1人しかいなかったので、いろいろな仕事を任せてもらいました。その中でホテル客室の仕入れを行っていた時にホテル営業担当者に出会い、その人がとても輝いていて興味を持ったのがきっかけです。その後、マンダリンオリエンタルホテルにお声がけいただき、ホテルでの勤務を始めました。

日本人として海外で働く魅力とは

 日本にいれば大多数の日本人のうちの1人でも、ひとたび海外に出れば特別な存在になり、「日本人らしさ」も武器の一つになります。良くも悪くも目立つ存在です。その環境が私にとっては面白く、長い間海外でやりがいを持って働き続けることができている理由だと思います。

今まで勤務した場所で印象的だったエピソード

 マンダリン・オリエンタル・マニラは私が入社した当時、既に創立約30年で設備は老朽化していましたが、サービスレベルが非常に高く、全てのスタッフのホスピタリティが徹底していました。設備が古くとも、そのサービスでお客様の信頼を得て同地域の新しいホテルと同等以上の人気がありました。(その後インフラ・設備の老朽化を理由に2014年に閉館してしまいましたが)私のホスピタリティの基礎はそこで学んだように思います。

ホテル業界にこれから入りたい人へのメッセージ

 心をこめたおもてなしを大切にしていただきたいと思います。ホテル業界に限らず、これからの社会ではテクノロジーとサービスの融合、自動化が進んでいき、仕事の質が変革していきます。弊ホテルでも2機清掃ロボットを導入させていただき、毎日一生懸命働いてくれています。 このように人力による単純作業はどんどん減っていくでしょう。新しく開業するホテルだと、さらにハイテク化が進んでいくと思います。チェックインまでが全て機械化されたり、掃除さえ自動化されるかもしれません。その中で残っていくのは“心を通わせる仕事”だと思います。

今後の目標をお聞かせください。

 ホテル・ニッコー大連が全ての関わっている方にとって、温かくなれる場所にしたいと思っています。お客様は快適にアットホームなご滞在を、スタッフは当ホテルで働いていることを家族に誇れる職場にしたいです。

 ニッコーホテルでの、“日本のおもてなしや和のこころという素晴らしい文化を現地の社員に理解してもらい、より良いホテルにしていく”という仕事は、非常にやりがいがあると感じています。これまでの総経理が築かれてきた想いを受け継ぎつつ、時代に即した改革を行い、地域ナンバーワンのホテルとして大連で名を轟かせられるようにこれからも尽力して参ります。