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billibilli
インタビュー
2025年7月2日

手足のマイクロサージャリーからアルツハイマー病の治療まで
医療の新たな分野を切り拓く

大連市友誼医院 医学博士、副主任医師

創傷骨科・手足顕微外科 副主任(業務責任者)

劉 立軍(りゅう  りつぐん)氏


■専門分野

 四肢の骨および軟部組織の損傷、骨・軟部腫瘍、手足疾患の診断と治療に精通。特に重度の複合的な四肢外傷の治療に豊富な経験を有する。

骨盤骨折や四肢骨折の低侵襲手術、切断された手足や指の再接着、糖尿病性足病変などの創傷修復、骨髄炎、骨延長、内反足(クラブフット)、外反母趾の矯正手術にも長けている。

超マイクロサージャリー技術を用いたリンパ管静脈吻合術により、アルツハイマー病や四肢のリンパ浮腫の改善にも取り組んでいる。

■所属・社会的役職

中国創傷救急指導医

大連市健康教育学会 骨病科学予防専門委員会 副主任委員

大連市医学会 骨粗鬆症・骨代謝分会 委員

大連市医学会 手外科専門分会 委員

大連市医学会 マイクロサージャリー専門分会 委員

大連市医師協会 整形外科分会 委員

大連市軟部組織疼痛研究会 創傷分会 委員

大連市労働能力鑑定委員会 専門家

外来診察時間:毎週水曜日 午前

長年携わっている創傷骨科(外傷整形外科)および手足マイクロサージャリー(Microsurgery/顕微外科手術)について教えてください。

 私は主に重度外傷の治療に取り組んでおり、特に骨盤や四肢の複雑骨折の低侵襲治療、手足の切断再接着手術を数多く行ってきました。常に「機能の回復」を最優先に考えています。

指の再接着手術は難しいのですか?

 はい、非常に難易度が高い手術です。切断された指を元通りにするには、直径1mmにも満たない血管、神経、腱、骨を精密に修復する必要があります。これは顕微鏡下での繊細な作業であり、高度な集中力と技術が求められます。

成功のカギは何ですか?

 最も重要なのは、切断された部位の保存状態と、事故から手術までの時間です。たとえば6~8時間以内に適切に保存し、迅速に病院へ搬送すれば、成功率は大きく向上します。また、切断の原因が圧挫や引き裂きであれば、より難易度は高くなります。

医師の年齢は技術に関係しますか?

 年齢よりも、顕微外科手術の経験の積み重ねが重要です。特に指の再接着手術は、熟練したチームによる対応が不可欠です。近年では最新の顕微鏡機器を使用することで、血管吻合の成功率が高まっています。

患者や家族が注意すべき点はありますか?

 指が切断された場合は、速やかに医療機関へ向かってください。切断された指は清潔なガーゼに包み、氷で冷却(直接触れないように)しながら保存します。「時間との戦い」であり、迅速な対応が成功のカギとなります。


<アルツハイマー病治療への新たな挑戦>

最近、アルツハイマー病の治療にも挑戦されていると伺いました。

 はい、「頸部深層リンパ-静脈吻合術(LVA)」という超マイクロサージャリー技術を用いて、脳内の有害たんぱく質の代謝を促進し、アルツハイマー病の根本的な改善を目指しています。今年2月には大連市で初めてこの手術を実施し、術後2日で患者のMMSスコアが7から10に改善。短期記憶や言語能力に明らかな効果がありました。現在までに数十例を手術し、いずれも良好な結果が得られています。日本やアメリカからも患者が訪れています。

手足マイクロサージャリーの医師として、なぜアルツハイマー病の患者さんにLVA手術を行うのですか?

 私の専門は外傷整形外科および手足マイクロサージャリーであり、長年にわたり切断肢や指の再接着などの顕微手術を行い、超マイクロ技術の豊富な経験を積んできました。LVA手術は、直径0.5mm以下のリンパ管と静脈をつなぐ極めて精密な手術で、私の技術と完全に一致します。ただし、アルツハイマー病の診断や薬物療法は内科領域のため、当院では多診療科連携(MDT)による専門チームを結成し、統合的な治療体制を整えました。

アルツハイマー病 MDT(多診療科連携)外来について

 このMDT外来には、神経内科、老年病科、マイクロサージャリー科、麻酔科、リハビリ科などが参加し、正確な診断から手術、薬物療法、リハビリ、家庭支援まで、一貫した医療サービスを提供しています。今後も「心のこもった医療」を提供していくことを目指しています。


国際(特別)診療センター(IMC)について

大連市友誼医院のIMCとは?

 IMCは2019年、大連市衛生健康委員会の認可を受けて設立された大連初の正式な「国際(特別)診療センター」です。主に大連在住の外国人や、高品質な医療を求める方々に向けて、国際基準に基づいたワンストップ医療サービスを提供しています。

他の診療科との違いは?

 IMCの特徴は「専門性」「国際性」「個別対応力」にあります。各分野のベテラン医師が直接診察し、必要に応じて迅速にMDT(多診療科連携)チームを編成します。また、独立した診療エリア、VIP病室、先端医療機器を備えており、国際的な医療水準を満たしています。言語面では通訳も常駐しており、中国語が話せなくても安心して受診できます。

他にどんなサービスがありますか?

 IMCでは、高品質な健康診断、慢性病の管理、必要に応じて家庭医療や長期フォローアップの支援も行っています。在中外国人にとって、安心できる医療の拠点となっています。

日本人患者にとっての利便性は?

 日本語の通訳が常駐しており、問診から治療、会計まで全行程をサポートします。多くの日本人患者が持っている海外旅行保険や国際医療保険にも対応しており、保険会社との事前手続きの支援も行っています。