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特集記事
2022年6月13日

中国ビジネス ーコロナ禍を乗り越えてー

今月は、日本企業の中国ビジネスを振り返り、コロナ禍を考え、コロナ後の取り組みを追ってみました。「PLUS商会」「日系企業サービス連盟」「昶德グループ」からコロナ禍について聞き、「札幌コンベンションビューロー」のコロナ後を見据えたMICEの取り組みを紹介します。 本誌P12に掲載!

コンサルタントグループに聞くコロナ禍 現在とコロナ後を考える

長引くコロナ禍は、日常生活にもビジネスにも影響を与えている。特に、海外でコロナ禍へ対処しなくてはならない日系企業にとっては、戸惑うことも多いのではないだろうか。そんな時は、現地で日系企業向けにサービスを提供している専門家が大きな助けとなる。ここでは、「PLUS商会」「昶德グループ」「日系企業サービス連盟」の3つのコンサルタントグループへコロナ禍について聞いた。

呂文宝さん

呂文宝さん

電話・微信:186-4116-6407

E-mail:lvwb@sure-cpa.cn

日系企業サービス連盟は、物流の「遼寧金賀川物流有限公司」、不動産の「大連擎桜不動産(KEIOU不動産)」、法律の「北京市中倫文徳(大連)弁護士事務所」、人材の「大連大成人力資源服務有限公司」、財務の「大連碩華会計士事務所」、翻訳の「大連大成翻訳服務有限公司」の6社からなるグループ。日系企業へ優れたサービスを提供することを目的に、「同じ志を持った仲間」が集まっている。代表の呂文宝さんから話を聞いた。

日系企業サービス連盟を設立したきっかけは何でしょうか。

呂文宝 日系企業サービス連盟は、私の提唱で設立されました。私は普段、会計士として仕事をしておりますが、お客様の約70パーセントは日系企業です。会計サービスを提供する中で、「良い人を紹介してください」や「良い弁護士を紹介してください」といった相談を受けることがありました。私を信頼してくださり、「呂さんからの紹介であれば、安心できる」といった気持ちで、相談してくださったのだと思います。日系企業の中国人総経理から相談を受けたこともあります。「中国人なら、周りに知っている弁護士もいるのでは?」と思いましたが、やはり私からの紹介が安心に繋るようです。そこで、信頼できる仲間を集め、日系企業サービス連盟を結成いたしました。当グループには、信頼できる会社や専門家が揃っております。

コロナ禍を振り返り、企業の状況はいかがでしょうか。

呂文宝 私のお客様はメーカーや貿易会社が中心ですが、コロナ禍が原因で赤字になった会社はほぼありません。2021年度、増収増益を記録したお客様もいらっしゃいました。ただ、飲食業や旅行業、ホテルは苦境に立たされているのではないかと思います。

コロナ禍を乗り切るために、助言はありますか。

呂文宝 オミクロン株の感染力は強く、大連でも何回かクラスターが発生しました。中国はゼロコロナの方針で、コロナ禍の間は、いつロックダウンになるか、いつ移動制限になるか分かりません。この春、大連市の個別エリアが封鎖され、開発区と市内の往来も制限されましたね。感染が拡大すれば、上海のようなロックダウンが、大連で実施される可能性も否定できないと思います。ですので、万が一の時に備え、在宅勤務の準備をしておくべきだと思います。例えば、重要なPCは事務所に置いておくのではなく、自宅へ持ち帰るなどして、いつでも在宅勤務を始められるようにしておきましょう。この前、開発区と市内の往来が制限された際は、開発区企業の市内に住む社員が、開発区エリア、更には工場で寝泊まりし、何とか工場の稼働を続けたこともありました。コロナ禍では、上記の状況はいつでも発生する可能性があり、事前の備えが大切だと思います。

他にも助言はありますか。

呂文宝 また、コロナ禍で物流や生産が乱れると、注文を受けても、商品や材料を調達できない企業があります。そのため、通常とは違う在庫管理が必要になると思います。売買契約書にも「コロナの不可抗力」の影響について、条項を加えると良いでしょう。コロナの不可抗力で、在庫や納期が影響を受けた場合、どうするかを契約書に書き込んでおくのです。

コロナ後の見通しはいかがでしょうか。

呂文宝 私個人の考え方ですが、コロナウイルスを消滅できないため、遠くない将来に、ゼロコロナ政策も終わるのではないかと思います。その理由は、既に高齢者へのワクチン接種がだいぶ進んでいること、また、その頃までには中国国産の特効薬も開発されるだろうからです。条件が整えば、「withコロナ」へ移行できるようになると思います。そうなると、ロックダウンも往来の制限も無くなると考えられます。

日系企業へ伝えたいことはありますか。

呂文宝 中国の人件費は上がっていますが、それでも中国進出のメリットは大きいはずです。インドや東南アジアも魅力的な進出先かもしれませんが、整ったインフラがあり、サプライチェーンもしっかりしているのは中国で、中国も巨大市場です。そして大連は、外国人に対する隔離期間も、以前は28日でしたが、今は17日(ホテルで10日)へ短縮されています。また実は、コロナ禍でも、進出案件はあります。私も今、2社の設立に関わっております。日系企業サービス連盟が全力でお手伝いしますので、ぜひ大連での事業を検討していただければと思います。

廣田勝利さん 関国哲さん

廣田勝利さん

電話・微信:158-4110-4052

E-mail:hirotakatsutoshi@gzkj-dl.com

関国哲さん

電話・微信:132-3802-7768

E-mail:info@torai-logi.jp

昶德グループは、記帳代理、税務申告代理、会社設立代行、会計諸表月次審査及び監査報告、会計税務コンサルを行う「大連昶徳公正会計師事務所」と、国際海上輸送や国際航空輸送、国内陸送、輸出入通関、輸出入代行、倉庫保管、輸送保険代理、輸出入トータルソリューションを提供する「昶德東来物流(大連)有限公司」を中核としている。廣田勝利さんと関国哲さんから話を聞いた。

お2人は積極的な情報提供も行っておりますが、その狙いなどにつき、お聞きできますか。

廣田勝利 主に税法や会計法の情報提供を行っております。正確な情報を伝えるには、中国と日本の両方の会計を分かっている必要があります。中国の税法は変化が激しいですが、私たちは会計師事務所として、幅広い情報収集と分かりやすい情報発信に努めています。

 

関国哲 コロナ時期だからこそ、正確に中国の物流状況を日本にいるお客様へ伝える義務があると思います。例えば、「船が遅れているらしい」という「うわさ」では、ビジネスでは通用しません。今は船にGPSが搭載されていますので、弊社独自ルートで調べれば、船のリアルタイムの位置を伝えることができます。また、不定期的に「TORAI TOPICS」で中国政府からの情報と物流の現状を日本語に訳して発信しております。その際は、政府発表の中文資料を添付していますので、もちろん根拠となる資料になります。それを日本語訳して伝えれば、お客様が取引先へ説明する際にも役立ちます。

大連で、最近のコロナ禍をどの様に見ていますか。

廣田勝利 4月には開発区で部分的なロックダウンがありましたね。「油断してはならない」と感じます。特に、飲食業や教育業は、コロナ禍の影響が大きいと思います。自動車関連企業なども、隔日勤務になるなど、工場稼働に影響が出ています。

 

関国哲 4月の感染拡大は、輸入したアパレル製品からウイルスが検出されました。そのため、現在は海外から航空便の宅配便荷物が到着したら、まず空港で消毒をして、その後、更に10日間の保管、それからやっと荷物を取得できます。海上輸入貨物も必ず消毒作業が必要で、時間と費用がかかっています。このように、物流にも影響が出ています。

コロナ禍を乗り切るために、助言はありますか。

廣田勝利 個人も会社も感染予防を行うことだと思います。特に、会社の責任者はしっかりとした予防の意識を持つべきです。日本では、中国のコロナ対策や強制的なPCR検査に対し、否定的な意見もあるようですが、陽性者が増えていない点を見ると、効果があるのではないかと思います。1人1人の自覚もしっかりしているのだと思います。「自分は大丈夫だろう」という考えは、良くありませんね。

 

関国哲 助言とは言えませんが、歴史を振り返って見ると、どんな大変な時代でも勝ち抜く企業さんがありました。コロナ禍では、サプライチェーンの川上で部品供給が停止したり、自社の人員が不安定になり生産計画がブレたり、川下への輸送が上手くいかなかったりなどの影響が出ています。そのため、物流目線では、コロナ時期だからこそ、企業さんはそれぞれのコアコンピタンスに集中すべきで、物流や会計を専門業者に任せた方がよろしいかと思います。例えば、物流ですと、費用と納期の両方を重視するこの時期は、フェリー便も選択肢となります。昔は、急ぎの時に航空便、急ぎではない時に船便でしたが、フェリー便は航空便より1日か2日しか遅れませんが、費用は航空便の半分以下です。

コロナ後の見通しはいかがでしょうか。

廣田勝利 コロナ禍には、良い面もあったと考えたい思います。コロナ禍となり、教室でのセミナーや対面での訪問ができなくなりました。ですが、オンラインセミナーやテレビ会議が普及しました。この点は、良い経験だったと思いますし、コロナ後もこれらのオンライン対応は続けるべきだと思います。オンラインでしたら、日本側とも気軽に会議もできます。

 

関国哲 今まで、中国国内の販売のみ、または海外輸出のみの一本柱でしたら、それを二本柱に見直す。また、コアコンピタンスへの集中を進めたら良いのではないかと思います。そのためには、専門業者への相談をお勧めいたします。また、事業内容によっては、円安とRCEPは二重のチャンスではないかと思います。

注目している政策や動向はありますか。

廣田勝利 日系企業はあまり注目していないのですが、ぜひ関心を持っていただきたい政策が2つあります。それは「外資系ハイテク企業に関する優遇政策」と「外国籍者に対する住宅免税手当」です。まず、ハイテク企業に認定されると、通常は25パーセントである企業所得税(日本の法人税に相当)が15パーセントとなります。大連では、約4000社がハイテク企業の認定を受けていますが、日系企業は約40社ほどです。日系企業からは、「難しいからできない」「面倒だ」という意見が聞かれますが、もっと注目していただきたいと思っております。「ハイテク」という言葉から、高度な先端技術を想像するかもしれませんが、R&D部門がなくても申請はできます。ぜひ相談していただきたいと思います。住宅免税に関しては、1997年から外国籍社員の住宅費を会社が負担する場合、その金額の全額は社員の収入とはみなされず、個人所得税の対象とはなりませんでした。それが、2019年に制度が変わり、免税対象となるのは全額ではなく、1500元のみとなることになりました(金額は地域によって異なり、大連は1500元)。この変更は2022年1月から開始されるはずでしたが、延長となり、2024年1月から実施されることになっています。税負担が増えるわけですから、反対意見が多かったのかもしれません。この点も関心が低いかもしれませんが、制度の是非を考えてみていただきたいと思います。

 

関国哲 物流目線では、短期的に見ると、注目したいのは既に発効したRCEPです。長期的には、海南島に注目しています。海南島は、2025年から自由貿易港(フリーポート)となります。現在のアジアでは、香港とシンガポールが自由貿易港です。自由貿易港には数々の優遇政策がありますので、世界中の企業で中国本社を海南島へ移転する動きも増えています。将来、海南島は企業所得税も個人所得税も国内よりは大変減免となり、海外送入金も監視されなく、海外送入金の手続きも簡素化されます。私は、2021年に海南島を視察していますが、日系企業の進出は少ない印象でした。ぜひ注目していただきたいと思います。

 

※RCEP(アールセップ、Regional Comprehensive Economic Partnership Agreement)とは、2022年1月1日に発効した地域包括的経済連携。現在は、ASEANの10か国と中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、日本の15か国が参加している。関税の削減や撤廃などが定められており、貿易や海外投資の促進、経済交流の活発化などが期待されている。
張占良さん 孫暁冰さん 劉紅本さん

張占良さん

電話・微信:139-9866-7166

E-mail:kaneisi@vip.163.com

孫暁冰さん

電話・微信:133-0247-8856

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劉紅本さん

電話・微信:186-0179-6188

E-mail:liuhb@info-bugyo.com

PLUS商会(大連普拉斯企業管理有限公司)は、2018年8月に大連外国語大学卒業生10人の共同出資で設立された。レンタルオフィスと情報交流で事業を展開していたが、コロナ禍のため、現在は情報交流を中心に活動している。PLUS商会の3名(人事系コンサルタントの張占良さん、人材紹介の孫暁冰さん、人事システム開発の劉紅本さん)から話を聞いた。

コロナ禍は、経営にどの様な影響がありましたか。

孫暁冰 当社は人材紹介やヘッドハンティングを行っております。取引先は、日系のお客様が中心です。コロナの影響に対しては、積極的に、また楽観的に対処しております。勤務形態としましては、一時的に在宅勤務となり、訪問や対面での面接はできなくなりましたので、オンラインで対応しております。時にはお客様との間で、インボイスなどビジネス書類の郵送と処理もできなくなりましたので、売り上げの入金が遅くなることもあります。そこで、コロナの影響に対応して、RPO(Recruitment Process Outsourcing、採用業務の受託)も始めました。会社としては、「効率化」、入金が遅れるため「キャッシュの確保」、「マスクの徹底、密の回避」を行っております。求職者の傾向としては、コロナの影響は不安定要素でもありますので、転職は減っております。今すぐ転職するのではなく、もう少し後に転職するという人が増えている印象です。

 

劉紅本 当社は、日系のお客様へ人事システムを提供しております。例えば、人事情報管理や勤怠管理、給与計算などのシステムです。当社はIT企業ですので、もともとオンラインでも業務がしやすく、大きな影響は受けませんでした。2021年には、大連分公司も開設いたしました。

コロナ禍で、システムへの需要は高まりましたか。

劉紅本 はい。システムの導入で、効率化を実現できたり、労務リスクや法律リスクに対応したりできます。中国の人件費は上昇していますが、残業代も含む給与計算は、システムで効率化できます。また、中国は法律の改正が多いため、例えば残業代や税金、社会保険、育児休暇などの規定が変わったとしても、システムを導入しておけば、法改正にも柔軟に対応できます。在宅勤務での給与計算なども、システムで対応できれば、間違いも減ります。

ココロナ禍は、ビジネス環境にどの様な影響を与えていますか。

張占良 入国ビザが制限されていますので、中国への入国が難しくなり、往来が減っています。また、工場の停止や物流の乱れといった影響が出ています。中国への入国では、「招聘状」に関するご相談が増えております。また、社員が隔離されてしまった場合の給与計算や、シフト勤務に関する労務相談、アルバイトの給与に関する相談なども多くなっております。さらに、上海がロックダウンとなったことで、上海に赴任できなくなっています。この場合、大連や青島にまず入国する例が多く、PLUS商会でもこれらの方々をサポートしております。

コロナ禍を乗り切るために、助言はありますか。

張占良 時間を無駄にしないため、迅速な決断が必要だと思います。そのためには、活発な情報収集や情報交流、専門業者への相談などが役に立ちます。また、日本では東京への一極集中がよく言われますが、中国は上海への一極集中となっています。ですが、中国は地理的にも広く、市場も巨大ですので、営業拠点を分散させておくことも、効果的ではないかと思います。例えば、大連、青島、寧波、広東などへ分散させておけば、コロナ禍などの緊急時対応だけではなく、営業活動も展開しやすくなります。

コロナ後の見通しはいかがでしょうか。

孫暁冰 長期的な視点で見れば、色々な業界で新しい求人ニーズが出てくるのではないかと思います。例えば、越境EC、コロナ対応の無接触体温モニタリングシステム、テレビ、ゲーム、PCR検査関連などです。

 

張占良 今の大連は、あまり成長していると言えないかもしれませんが、2026年には「大連金州湾(海上)空港」が完成予定です。新空港が稼働となれば、大連は日本、中国、韓国の物流の中心となり、貿易面でより重要な役割を担えると思います。これは、日系企業の多い大連にとっては、良いチャンスとなるはずです。また、コロナ禍であっても、2021年6月には日本電産の大連新工場が稼働しました。2021年10月には、鈴木研磨の新工場が稼働し、オムロン中国財務センターも大連に開業しました。オリックスのオフィスビルも2022年9月末に開業予定です。ローソンも、大連で300店を超えました。これらは、日系企業の前向きな姿勢です。

日系企業へ伝えたいことはありますか。

張占良 中国の沿海都市で比較すると、大連は人件費や家賃が比較的安く、日本語人材や工場技術者、IT人材も豊富です。中国の巨大市場は魅力ですので、ぜひ大連を拠点に中国進出を検討していただければと思います。私たちPLUS商会も、力になります。

札幌市とMICE コロナ後を見据えた取り組み

MICE(マイス)は、各種ビジネスイベントの総称であり、企業会議(Meeting)、報奨旅行(Incentive Travel)、国際会議・学会(Convention)、展示会・イベント(Exhibition・Event)の頭文字を取っている。MICEを開催する都市にとっては、国際競争力の強化やブランド力の向上が期待でき、海外の都市でも取り組みが盛んだ。コロナ禍で人の往来が制限されるなか、MICEも大きな打撃を受けたが、札幌ではコロナ後を見据えた取り組みも始まっている。ここでは、札幌でMICEに取り組む「札幌コンベンションビューロー」の金内夢来さんと山屋恵嗣さんに話を聞いた。

コロナ後を見据えた取り組み

担当:金内夢来さん(中国語対応可)

電話:+81-11-211-3675

E-mail:kaneuchi-y@plaza-sapporo.or.jp

東京セールス:山屋恵嗣さん(英語対応可)

E-mail:yamaya-k@plaza-sapporo.or.jp

札幌とMICE

日本でのMICEは、観光立国を実現するための重要な柱と位置づけられており、12都市(札幌市、仙台市、東京都、千葉県 千葉市、横浜市、名古屋市・愛知県、大阪府・大阪市、神戸市、京都市、広島市、福岡市、北九州市)が「グローバルMICE都市」に認定されている。

札幌は約30年前からMICEに着目しており、札幌コンベンションビューローがその中核を担ってきた。長年にわたって蓄積したノウハウと、地域関係者とのネットワークを活かし、MICEに関するワンストップサービスを提供している。また、札幌だけではなく、小樽やニセコ、千歳などとも連携しており、札幌を中心とした広域圏でのMICEにも対応している。主催者と参加者の満足度向上のため、独自のプログラムを開発し、提案している。

コロナ前の2019年度、札幌コンベンションビューローは69件の海外からの報奨旅行を支援し、約1万人を札幌に迎えた。来訪人数は中国からが最多で、約1/3を占めた。中国に次ぐのは東南アジアからで、ここ4~5年で人数が増加している。北京や上海からの来訪が多いが、金内夢来さんは「ぜひ大連からも札幌へMICEで来ていただきたい」と話している。

札幌MICEの魅力

海外の日系企業が報奨旅行で日本を訪れる場合、本社のある都市へ行くことが多いかもしれない。だが、山屋恵嗣さんは「非日常を感じる体験、チームが一丸となれる体験を、ぜひ札幌で」と語る。では、札幌MICEの魅力は何だろうか。

【自然】
札幌は都市機能と自然が調和しており、豊かな自然に恵まれている。そのため、雄大な自然の中で、密を避けた活動を楽しめる。例えば、きれいな空気と開放的な雰囲気を感じながら、カヌーやラフティング、フルーツ狩り、キャンプ、ゴルフなどを満喫できる。
また、温泉では札幌近郊の定山渓温泉をはじめ、周辺に有名な温泉地が点在している。四季を楽しみながら、天然温泉で仕事の疲れを癒せる。

【冬】
北海道と言えば、冬や雪を連想する人も多いのではないだろうか。札幌の冬は長く、もちろんウィンタースポーツが盛ん。1972年には、札幌で冬季オリンピックも開催された。オリンピックのスキージャンプ競技に使われた大倉山ジャンプ競技場は現在、MICEイベントでも活用されており、冬季オリンピック競技の体験をしたりなど、多彩なプログラムが用意されている。札幌市内には6つのスキー場があり、近郊にも大型のスキーリゾート(ルスツリゾート、キロロリゾート)がある。

【食】
食の宝庫である北海道は、食料自給率が214パーセントに達している。採れたての野菜や新鮮な魚介類、乳製品を使い、地産地消で健康的な食を実践できる。北海道食材を利用したチームビルディングも、注目の体験となっている。
さらに、酒文化も魅力の1つ。1876年に誕生した「サッポロビール」は、日本最古のビールブランドであり、工場直送のビールとジンギスカンを味わえる「札幌ビール園」でのパーティは、主催者に人気だ。ぶどう栽培に適した環境や美味しい水と米に恵まれた北海道は、ワインと日本酒造りにも適している。余市町や仁木町でのワインツーリズム、小樽の田中酒造での試飲や見学も注目が高まっている。

【国際会議】
札幌には、北海道大学をはじめ、数多くの研究機関や教育機関が集まっており、宇宙科学、農学、医学など様々な分野で世界水準の研究が進められている。市内には、札幌コンベンションセンターやホテル、イベントホールなど、少人数から大人数まで対応できるMICE施設が多く、様々な国際会議や文化芸術イベントも開催できる。

コロナ後を見据えて

札幌コンベンションビューローでは、密を避けた自然の中でのコンテンツ開発も進めている。また、コロナ禍を経て、人々の需要にも変化があると見ており、健康や環境保全の要素も取り入れようとしている。さらに、札幌は「SDGs未来都市」にも選定されており、MICEとSDGsの融合も推進している。

中でも注目したいのは、「カーボンオフセットプログラム」だ。MICEはたくさんの人が集まるため、移動や宿泊での環境負荷が大きい。この点を解決するため、「カーボンオフセットプログラム」では、移動などMICEの実施に伴い排出される二酸化炭素の量を測定し、それを相殺(オフセット)する仕組みを整えている。例えば、東京から札幌へ飛行機で移動する場合は、1人につき約200キログラムの二酸化炭素が排出される。これを相殺するためには、カラマツ1本の植林が必要となり、金額に換算すると500円。500円を募金で受け取り、北海道美幌町の植林活動に充てる。募金は、植林だけではなく、野生動物の保護にも利用できる。このように、排出された二酸化炭素を地域の森で吸収するという循環型社会の実現も目指している。

終わりに

これまでに札幌コンベンションビューローは、報奨旅行向けに、想い出に残るMICEを演出してきた。空港到着時にウェルカムセレモニーを実施したり、札幌ドームなどのユニークベニューをパーティ会場として提案したり、主催企業の要望に合わせて企業ロゴの入ったメロンを用意したり、企業カラーでテレビ塔をライトアップしたりなど、工夫を凝らしてきた。コロナ後へ向けて動き始めている札幌コンベンションビューローと札幌のMICEに期待したい。