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billibilli
インタビュー
2024年12月2日

現場を知るプロ集団が工場「見える化」を実現 大連から世界の日系企業製造現場の効率向上へ

杉本信息技術(大連)有限公司

総経理

王 勃氏(WANG・BO)

 大連出身。1998年大連理工大学の機械電子専攻を卒業後、大連富士電機に入社、現場管理に従事。その後大連ローム電子での技術業務を5年、島津製作所で営業業務を4年経て、2012年独立し、会社を設立。2020年に「杉本信息技術(大連)有限公司」に企業名を変更。現在に至る。2022年、蘇州及び広州に子会社を持ち、2024年には日本との貿易を行う「杉本数字信息産業園発展(大連)有限公司」を設立。現在に至る。

どのような会社ですか

 MESシステムなどのパッケージを中心に、製造現場の「見える化」を実現するシステムの開発と販売を行う会社です。MES(Manufacturing Execution System)とは主に製造業で利用されるITシステムの一つで、製造に関わるオペレーションやマネジメント業務をデジタル化し、より効率的かつ正確に作業が行われるよう製造現場の管理や見える化、製造指示、作業者の支援などを行うためのシステムです。またWMS(Warehouse Management System )は倉庫管理システムのことで、入荷・出荷・保管・棚卸といった業務をデータ化して管理することで、倉庫の「見える化」を実現し倉庫内の業務を効率化、標準化します。

我々は上記のような生産現場の「見える化」をキーワードに、これまで130社以上の企業にシステムを導入いただいてきました。

どのようなシステムを取り扱っていますか

 MES、WMSの他に、ERP(Enterprise Resources Planning 企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するシステム)、工場設備の稼働率を分析するIoTシステム、QMS(Quality Management System 品質管理システム)、水・電気・ガスなどのエネルギーを管理するシステム、Andonシステム(ライン、設備の異常をランプで知らせるシステム)などを取り扱っています。弊社は1項目からでも開発が可能です。

どのような特徴がありますか

 大連に本社を持ち、蘇州、広州、天津、北京に営業拠点や開発拠点を持ちますので、中国国内で対応が可能な点です。また弊社の販売するシステムはノーコード(ソースコードの記述をしない)でメンテナンスが可能なパッケージシステムなので、リーズナブルかつ導入された企業様はメンテナンスが簡単です。

どのような分野で導入されていますか

 様々な製造現場に適したシステムのカスタマイズが可能で、これまでSMT(表面実装)、金属加工、成形、組立、半導体、化学、製薬、食品、ハーネス、鋳造、服装などの分野で導入実績があります。

なぜ社名に「杉本」

 今の社名に変更したのは2020年です。大切な恩師である杉本さんのお名前を入れました。島津製作所に在籍していた頃、埼玉県に研修に行きました。その頃は私は日本語があまり得意ではなかったのですが、日本語の勉強のため訪れた公民館で当時70代の杉本さんという男性に知り合い、私にゼロから日本語を教えてくれました。今の私があるのも、杉本さんのおかげです。その気持ちを忘れないために、社名を変更する際に彼の苗字を使用させていただきました。

なぜ「工場の見える化」を事業に

 私は独立するまでの14年間、日本の企業でメーカーの現場を経験してきました。日本の工業系の展示会に足を運んだ際に、日本の大手システム会社のMESシステムを知り、可能性を感じました。私は日系企業の製造現場をよく知っているので、よりニーズに応じたリーズナブルなシステムの実現ができるのではないかと考え、会社を立ち上げました。

どのような組織ですか

 大連を本社として、蘇州と広州に子会社をもち、その他に天津、北京に開発拠点を持ち、これら中国国内の各拠点で技術サポートが可能です。中国国内で導入からアフターサービスまでを行える体制が整っております。また、今後は日本での事業拡大を視野に入れており、現在福岡県に連絡所があり、来年、東京に事業所を設立する計画を進めております。

大連で会社を設立した理由と、メリット

 大連市で生まれ育ち、親の近くで仕事をするためにも大連に会社を作りました。大連は気候が良く、住みやすい街です。そして日系企業の工場が多く、日系企業にサービスを提供する我々にとってはメリットがあります。しかし新規進出企業は少なく、コロナ後は案件が減っており、工場の数が大連の3倍以上ある蘇州など他地域での案件が増えてきています。

仕事のやりがい

 独立してから苦しいことや辛いことも多かったですが、人との繋がりが仕事の大きなやりがいだと思います。事業を通して様々な企業や人との出会いがあり、学びがあり、全てがかけがえのない経験だと感じています。特に、自分が企業の代表になったことで、企業のトップと直接知り合いになり、色々なことを教えていただきました。日系企業との取引を重ねてきた中で、日本式の経営を学びましたし、ご帰任後も連絡を取り続けている方も多いです。このようなご縁が、日本へ事業拡大しようというきっかけにもなっています。

座右の銘

 「商いは心」です。実は日本で訪れたある居酒屋に貼ってあった言葉なのですが、とても印象に残り、私の座右の銘そして企業理念として会社の壁に貼っています。世の中には色々な仕事がありますが、決まったルーティンをこなしているだけではロボットと変わりがありません。自分の頭で考えるという意味での「心」、そしてお客様の立場に立って思いやりを持つという「真心」を大切にしながら行動することで、より信頼を得られたり、新しいものを生み出すことができます。

今後の計画

 中国全体の経済も厳しい状況が続いており、今後は日本での事業拡大を視野に計画を進めています。その第一歩として貿易会社の杉本数字信息産業園発展(大連)有限公司を立ち上げました。また、新しいシステムの発売も予定しています。ベトナムなど東南アジアでの案件も相談を受けており、今後は世界中の日系企業の製造現場にシステムを導入していただけるよう尽力していきます。

新しいシステムの開発

 従来のシステムに加えて、「発注製造工程別進捗管理システム」パッケージの開発を進めております。これは製造業の受発注のシステムですが、ただ発注ができるだけでなく、そこで発注した製品の製造工程の進捗状況が随時確認できるというシステムです。商品の受発注システムは多くありますが、このシステムを導入することで、発注から納品までの状況を画面上でリアルタイムに確認でき、電話やメールなどで逐一確認する必要が無く、品質管理や納期管理をスムーズに行うことができますので、コストダウンや納期の短縮を実現できます。お客様とのやりとりやヒアリングの中で、このようなニーズがあると分かり私の発案で開発を進めました。間も無く完成し、年内には販売を開始する予定です。

中国IT企業に日本で需要がある?

 日本の大手企業は自社でエンジニアを抱えており、システムを外注していないことが多いですが、中小企業の場合、コストの問題などでITシステムを導入していない企業がまだ多くあります。日系企業の現場を知る点、100社以上の日系企業にシステムを導入いただいてきた実績、そしてコスト面などを活かして日本でビジネスを広げることが可能だと信じています。今後は大連を中心に、日本と中国の全域で仕事を広げていきます。システム導入に関してお悩みの皆様、お気軽にお問い合わせください。