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インタビュー
2024年10月1日

世界中の消費者の「おいしい笑顔をつくる!」日本と海外拠点の強みを生かしシナジー効果を発揮

井村屋(大連)食品有限公司

上田長平(うえだ・ちょうへい)氏

1973年、大阪府出身。1997年関西大学工学部卒業。井村屋製菓株式会社へ入社、調味料事業部に配属。2006年北京京日井村屋食品有限公司へ出向。2015年井村屋(大連)食品有限公司へ出向。2021年井村屋(大連)食品有限公司董事兼総経理(現職)へ就任、現在に至る。これまでの担当業務は主に、生産、商品管理、開発。

井村屋(大連)有限公司について

業務用調味料とカステラの生産販売を行う会社です。2013年10月に会社を設立し、2014年10月北京工場から調味料工場の設備を移設設置、2015年1月に開業しました。2015年10月にはISO22000(現FSSC22000)認証を取得し、2018年09月北京工場からカステラ工場の設備を移設設置しました。今年6月に日本人1が帰任となり、現在は日本人1人、中国人31人で運営しています。

大連(旅順)に製造拠点を置いた理由

事業継続のため、北京工場を移転する必要があり、候補地の中で選ばれたのがこの大連(旅順)でした。中国井村屋は北京にて業務用調味料とカステラを生産販売しておりましたが、

2010年頃から、環境保護の規制が厳しくなったこと、また人件費やユーティリティ(電力、光熱費など)コストの高騰により工場移転することになりました。

そして新拠点を決定するための調査が始まり、華北と華中地区を中心に数カ所の移転候補地が挙がりました。その中で大連(旅順)に井村屋グループと以前からお取引がある協力企業様に相談したところ、工場設立に必要な用地や建設業者、政府手続き等にご協力いただける確約をいただいたため、現住所に製造拠点を置くことに決定しました。

大連に製造拠点を置くメリット/デメリット

メリットとしては、第一に日系企業が多く、また日本語話せる中国人が多い点です。日本人を対象にした各種産業が発展しており、中国語ができなくてもほとんど不便なくビジネス商談できることから、仕事をしやすい環境といえます。もう一点は地理的なメリットで、輸出が比較的便利である点です。会社から港まで短時間で運送でき、輸出手続きは比較的短時間でかつスムーズに進みます。一方で、国内物流においては逆に地理的不利があります。例えば大連から上海や広州までの陸運は3~5日数がかかります。天候不良(特に積雪)による原材料入荷、製品出荷の遅れ、従業員が出勤できないことによって、顧客にご迷惑をおかけすることがあります。

自社の強み

井村屋グループは、菓子、食品、デイリーチルド、点心・デリ、冷菓、冷凍食品、冷凍菓子、スイーツ、調味料など幅広いカテゴリーを扱っています。常温、冷蔵、冷凍の製造・開発技術を持ち、またその販売ルートを持っていることは強みの一つです。そして、これらのルート、開発、生産技術をコラボレーションしてシナジー効果を高められることも大きな特長です。

S D Gsの取り組みの中で力を入れているもの

「つくる責任 つかう責任」という標題で、食品ロスゼロを目指しています。販売数量は少ないですが、カステラの切れ端は中国のコンビニエンスストアで販売しております。サプライチェーンマネジメント(SCM)を行い、原材料調達から生産や在庫管理、販売物流、消費者までの一連の流れを管理しております。特に不合格品や賞味期限切れによる廃棄防止は、最重要課題として取り組んでいます。

社内活動や福利厚生など

まず、従業員満足度の向上を大切にしています。毎年の健康診断の他に、誕生会、日帰り旅行、忘年会などのイベントも開催しています。そして社内教育も重視しており、日本語講座、PCのアプリケーション講座(ワード、エクセル、パワーポイント)による人材育成を行っています。

大連に進出し11年目を迎えての抱負

当社の企業理念「おいしい!の笑顔をつくる」ため、安全・安心な商品・サービスの提供をおこない、社会へのお役立ちを多面的に進め、世界の消費者の期待に応えていきたいです。自分自身も「笑顔」を忘れず、元気に明るく生き生きと進んでいきます。

各製造拠点の違い

井村屋グループでは日本、中国、アメリカ、マレーシアの4国に拠点をもち、各々の強みと特色を活かした事業展開を行っています。

IMURAYA USA, INC.ではIDFや井村屋株式会社で製造した商品を輸入しアメリカ市場で販売するなど、事業間でのシナジー効果をグローバルに発揮しています。また、日本では井村屋グループ株式会社を中心に海外事業会社の事業サポート・技術供与などの支援やASEAN等への輸出を強化し、海外市場の拡大を図っています。

大連工場の特徴はカテゴリーが大きく異なった「調味料」と「カステラ」を製造している点です。原料、製造工程、商品管理、システムが異なるので、お互い勉強し切磋琢磨することによって、シナジー効果を発揮しています。さらに工場を最適化すべく、自動化(AI、DX)の導入も検討しており、日本本社の事例を研究し、水平展開するように準備中です。

生産している主力商品

業務用調味料はラーメンスープの素材、スナックシーズニング、外食レストランの調味料で、販売比率は、中国60%と輸出40%です。

カステラはプレーン、抹茶、チーズ、黒糖の4種類の味で、アメリカ販売が主力です。現地のアジア系スーパーで販売しています。中国販売は、以前はスーパーやコンビニエンスストアが多かったですが、時代の変化とともにオンライン販売が増加しました。カステラはシンプルなお菓子ですが、実際に生産に携わってみると、非常に奥が深いです。添加剤を使用せず、独自の技術と蓄積されたノウハウで品質を実現しています。お子様からお年寄りまで安心してお召し上がりいただけるこだわりの商品です。

入社した理由

学生時代から外食関係のアルバイトを続けた経験があり、食品業界に対する興味が芽生えました。数ある企業の中で、当社は誕生会や表彰、人材育成研修制度など、社員を大切にする制度があります。創業128周年の守るべき伝統を守りながら、 時代の変化に合わせて、 挑戦をし続ける“不易流行”。 オリジナリティを追求する姿勢を大切にし、 絶対に人の真似をしない“特色経営”に社風に引かれて入社いたしました。

中国で働く上で大切にしていること

日本と中国の違いを認識することです。時間や数字の感覚が、日本人に比べて曖昧だったりと色々ありますが、その中でも特に感じるのは「意見が率直だ」という点です。一般的に言いにくいとされる内容であっても、中国では率直に相手に伝える人が多いです。はっきりと意見を述べ、その上で議論をおこなわなければ共通の認識をとることができない、という考え方が背景にあります。曖昧な言い方や、暗黙の了解という考え方は中国人には理解しづらく、ビジネスを行う中で支障をきたす可能性があります。

仕事のやりがい

毎月、売上損益の予算目標、食品安全目標があります。達成に向けて緊張感の中で努力、進捗管理をした結果、目標を達成した時にやりがいを感じます。目標を達成できれば自己肯定感も高まり、仕事に対する自信と新たな責任感も実感できるようになります。

一番好きな自社のお菓子

中国生産の製品では、「カステラ(黒糖味)」が一番好きです。食感はしっとりとした、ふんわりやわらかです。黒糖独特の苦味でコク深く、香り豊かを感じられる逸品です。

日本生産の製品では、井村屋の代名詞とも呼べる「あずきバー」です。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩の4種類のみで食品添加剤は含みません。シンプルですが、あずきバー1本に約100粒のあずきを均等に入れる井村屋の独自技術が詰まっています。カチカチの食感もあずきバーの魅力です!

休日の過ごし方

大連市内の朝市、夜市を散歩しながら探索し、新鮮で季節の食材を購入し、自宅で中華料理のレシピを調査しながら、調理試食することが楽しみです。また色々な食事会や交流会に参加し、飲んで歌って騒いで、ストレスを発散しています。

中国語上達の秘訣

まず「学校に通うこと」です。2015年から約8年間、継続して毎週学校へ通って勉強しています。先生は資格を持った方なので、正しい文法や発音を学ぶことができます。

そして「社外の人と交流すること」も大変重要です。毎日顔を合わせる部下や同僚では、会話と単語が限定されます。従いまして、社外の方々と多く交流することによって新しい単語や文化を習得し、同時に自分の弱点を知ることができます。

座右の銘

最近は、井村屋グループのキーワード「先義後利」で、利益を後回しにして道義を優先するという意味合いです。不況下において、企業は先行きの見定めが容易ではなく、目先の「利益」を優先しがちです。会社にとって利益はもちろん重要ですが、長年経営を続ける上では利益以上に重要なものも多く存在します。道義を優先して行動すれば、後に「あの会社があって良かった」と周りに思わせることができ、その結果会社の経営もスムーズに進むと信じております。

今後の目標

今年、前任者の商品開発担当者が帰任しましたので、現在は私も商品開発に携わっています。事業発展のためには、新商品の開発が必須です。みんながあっと驚く新商品を開発して、世界の消費者の「おいしい笑顔をつくる!」ことが夢です。