倉敷化工(大連)有限公司
総経理 大山誠一(おおやま・せいいち)氏
1972年生まれ、岡山県倉敷市出身。1990年に倉敷化工株式会社入社。金型設計、技術、商品企画、実験研究などの配属を経て、2017年から2022年まで工場長として大連駐在。
2023年に総経理として再び大連に赴任し、現在に至る。
倉敷化工(大連)有限公司とは
「倉敷化工(大連)有限公司」(以下、KKCD)は2003年11月24日に設立した製造会社で、自動車メーカー及びアッセンブリーメーカーで使用される防振ゴム製品及び産業機器防振の開発・製造・販売を行っています。岡山県に本社をもつ「倉敷化工株式会社」の100%子会社です。2004年に稼働開始し、今年で20周年を迎えました。10月に記念式典を行う予定です。社名略称のKKCDには、感動・改善・チャレンジ・Do the Bestというスローガンが込められています。
主に車のエンジン、サスペンションなどに使用される防振のためのパーツを製造しており、旅順の子会社「大連倉敷ゴム部品有限公司(DKR)」ではゴムホースを製造しております。
大連に生産拠点を作った理由
港が近いこともありますが、日本語が話せる人材が多いことはやはり大きな理由の一つです。間接部門社員の約8割が日本語でコミュニケーションを取ることが可能で、日本人が出席する会議は全て日本語で行い、報告書も日本語で作成しています。コミュニケーションに阻害がないことは、やはり日本の会社にとっては優位な点と感じています。
現地化は進んでいますか
社員は444名(2023年末)で、日本人は4名です。現地化を進めており、以前は工場長も日本人でしたが、今年より中国人社員に引き継ぎました。
会社としての強みはなんですか
様々なゴムを加工できる点に加えて、自社でのゴム練り、さらには金具と接着する加工ができる点です。ゴムと金具は直接接着することができないため、特殊な接着剤と手法を用いて接着を行います。部分的には手作業で行っているところもあり、長年勤務している職人の技術力も強みの一つです。
近年はローカルの企業の技術力が向上しており、競争が激化しています。現在は高い技術力に合わせてスピード感をもち、コストを抑えることはもちろんのこと、技術提案力を高めていくために新たな挑戦を行っているところです。
新たに行っている取り組みはありますか
スピーディーにお客様の要望に対応すべく、開発部を新たに立ち上げました。これまでは製造の拠点として運営を行ってきましたが、競争の激化や市場の変化に応じて、開発機能を持つべきだと判断しました。複数の企業から新しい部品の見積もりをいただいており、需要の高さを感じています。
また今後は新エネルギー車(NEV)の部品の製造開発も進めていきたいと考えています。
但し、ガソリン車とNEV車は構造が異なる部分があり、新しい振動課題も有りますが
今後中国市場を開拓していくためには、NEV車に対応することも必須です。
大連で働いて感じた日本とのギャップはありましたか
仕事に対するスピード感が大きく違う点です。一つの新しい製品に対して、日本は作る前に考える、中国は作ってみてダメなら直す。この感覚が大きく違います。中国でビジネスをする上ではまずアクションを起こすまでのスピード感がとても重要です。
日本への輸出は減っていますか
現時点では好調と思います。マツダの車の売れ行きが好調であることが影響しており、元々は3割程度でしたが5割程度が日本向けの輸出となっています。しかしこれは、単純に日本向けが好調であるだけではなく、中国国内への販売が低調なため、日本向けの比率が上がってきている事にも起因しています。
今後は中国国内向けの需要を増やすことにより、更に売り上げを上昇させていく事が急がれます。
自身の中国との関わりについて
2004年の工場立ち上げ時には本社技術者としてKKCDへ来ていました。
2016年頃には、技術指導員として技術提携先の会社へ月1~2回江蘇省へ出張に来ていました。そして、2017年に駐在として大連に駐在し、2022年まで工場長を勤めていました。2023年から再度大連に赴任し、総経理として勤務をしています。
入社のきっかけや仕事のやりがい
もともとは卓球です。当時の卓球部顧問の先生に勧められ卓球チームのある会社ということで入社しました。倉敷化工の卓球は強豪チームで、岡山県を代表して実業団に参加したこともあります。そのため入社した当時は実のところ業界を詳しく知りませんでした。
学生の時に設計を学んだので、実際に設計したものが製品として形になる仕事は、入社当時から面白いと感じていたものです。それから様々な部署を経験しましたが、会社のビジョンを設計していく総経理の仕事も、非常にやりがいのあるものです。
独自の設備や工場の自動化について
2017年に私が工場長として大連に赴任した際に、工場の自動化を開始しました。生産現場の改善を継続しながら、自動化/省人化(ロボット)設備を導入しています。また新しい設備や既存設備にIoTを組み込むことで生産効率の向上や見える化の推進を現在行っています。具体的には生産状況の可視化や条件監視による不良予防、生産進度管理、トレサビリティーなどで、少数人員による高品質・高効率の生産実現を目指して進めています。
仕事の中で印象に残ったこと
コロナ禍で、会社の中に封鎖されたことです。まだゼロコロナ対策が厳しかった2021年当時、弊社に出入りしている業者の方に陽性者が出て、その日のうちに会社が封鎖され、工場を含めた社内にいる人間は外に出られなくなり、工場に一泊することになりました。
この時は大変でしたが、聞きつけた周囲の日系企業の方々が様々な物資を届けてくださり人の温かさを感じたりと、とても印象に残る出来事となりました。
会社独自の取り組みはありますか
日本本社の親会社であるマツダでは、ABC(アチーブ・ベスト・コスト=最適コストの達成)活動に地場(Jiba)を加えた「J-ABC活動」という活動を海外拠点を含めた全ての拠点で
行っており、中国でも展開して11年目を迎えています。弊社でも改善活動に力を入れており、社内には専属のABC推進室があり、月に2回の報告会を行っています。
さらに4年に1回グループ全体で「ワールドカップ」を開催しています。これは各拠点で代表の改善活動を決めて、4年ごとに代表者が各拠点に行って順位を決めるというものです。
日本、大連、タイ、メキシコの持ち回り制で、社員は海外拠点にいくチャンスがあるということでモチベーション高く改善活動に取り組んでくれています。今年はKKCDが最優秀賞に輝きました。次回大会は大連が会場です。
今後の目標
変化にスピーディーに対応し、新しい挑戦を行っていくことです。これまで培ってきた技術力を強みにして、まだ現地のメーカーが作れないような高付加価値の製品を売っていきたいと考えています。その実現のためには、会社全体でビジョンを共有して同じ方向に向かっていく必要があります。
日本本社では「倉敷Vision2030」という2030年に向けたビジョンを定めており、それを元にKKCD独自の2030ビジョンを制定し、社内で共有を行っています。現地社員に日本本社のビジョンを理解してもらうのはなかなか難しく、何度も説明会、共有会を行い、同じ意識を持って仕事に取り組めるように工夫しているところです。業界を取り巻く環境は大変厳しくなっておりますが、この先も30周年、40周年に向け進んでいけるよう仲間と力を合わせていきたいと思います。