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インタビュー
2023年8月1日

羽田便就航を機に新しい日本航空の未来へ大連から人と人、人とモノの「繋がり」に貢献

日本航空大連支店 支店長

大連日本商工会 会長

柴田晃伸氏(しばた・あきのぶ)

 1967年生まれ。89年から1年間大学在学中に遼寧師範大学で留学。92年日本航空株式会社に入社。98年北京支店天津事業所を経て、2000年日本本社の国際旅客営業部で欧米地区を担当。02年北京支店アジア地区支配人付、中国副担当付、04年香港支店香港営業所旅客販売企画、07年北京支店中国地区担当役員付、08年北京支店北京営業所、2010年日本本社国際路線事業部で中国・韓国路線グループを担当。18年大連支店支店長に就任し、現在に至る。中国駐在は合計16年目に突入。

 7月19日に運行を開始した日本航空の大連-羽田便。コロナ禍を乗り越えて、新たな未来へ向かう日本航空。今月は、2018年に大連に赴任し6年目を迎える日本航空大連支店の柴田支店長に、満を持してインタビューを決行した。

大連の中での日本航空の立ち位置

 弊社は1997年に大連線を開設しており、今年で就航26年目を迎えました。この度コロナ前から計画していた羽田便を無事に就航することができました。弊社が大連でどの様な存在であるかを判断するのはお客様や社会だと思いますが、この大連において、自然とその様な存在として認知頂ける状態を目指し、お客様の利便性の向上、地域社会の進歩と発展に寄与していく事に努めて参りたいと考えております。

羽田便就航により期待されること

 羽田空港の特徴は、①都心に近い②弊社日本国内線のハブとなる空港の2点が挙げられます。日本国内移動、ひいては大連からの直行便がない日本の都市間との移動における利便性向上が期待できると考えております。ご到着当日、日本国内14都市へのお乗り継ぎが可能で、大阪、福岡、札幌は元より青森、小松、広島、松山、徳島、高松、北九州、大分、長崎、鹿児島、沖縄へ接続しております(2023年7月現在)。

コロナ期間中に印象に残ったこと

 コロナ期間中は唯一の大連からの国際線としての運航を続けて参りました。日中間の交通インフラの使命として「絶対に運航を止めない。日中間の空の懸け橋を死守する」という強い思いでおりました。しかしご搭乗のお客様がいらっしゃらなかったり、貨物が無かったりするのでは運航の意味がありません。防疫政策などもありお一人お一人も大変な中お客様のご支援、関係者のご支援によって今まで運航を継続できている事には感謝しかございません。

中国国内における日本航空のPR活動

 弊社大連線はもともと中国のお客様の比率が高いのですが、昨今の比率は8割程度まで増えています。ですので中国の方向けのPRにも力を入れており、オフラインでの各種イベントへの参加、オンラインでは微信公众号や小程序等、中国の方がご使用になるツールの主要なプラットフォームを活用した告知を行っております。

日本企業にとって、大連の強みとは何でしょうか。

 事業を行う上で圧倒的な強みは、日本語人材の豊富さです。また、日系企業数が多いという事自体も、大連の日系企業にとっての強みであり、他都市と比べると市政府との距離感が近く、日系企業の意向も反映して頂きやすい環境だと思います。また、在瀋陽日本国総領事館の事務所やJETROもあり、生活面や事業を行う上での必要情報等でサポートを頂ける環境にある事が強みです。

大連で働く中で感じた日中文化の違い

 あくまで弊社内で感じる事ですが、日本人は前もって物事を計画したり、問題を予め想定したりする事が得意で、予測を重視する傾向が強いのに対して、大連人は問題発生後に優れた反射神経で物事を解決する場面で高い能力を発揮するという違いがあります。

 また公私の区別、あるいは「正式」の概念にもギャップを感じます。日本では「正式な通知は必ず紙をもって」となるところ、中国では微信(WeChat)のコメントを正式な通知として物事が遂行されていく事などもあり、日系企業が戸惑う事も多いのではないかと思います。

自身が考える大連の魅力

 食べ物、風景、気候等、大連の魅力は沢山ありますが、私は何と言っても「人」だと思います。

 大連は日本語教育で全国でも有数の大連外国語大学もあり、諸外国の中でも日本との貿易が圧倒的に多く、日本語の堪能な方が多数いらっしゃいます。外国語を理解するためには、単に言語だけではなくその国の文化的背景の理解や認識が必要ですが、大連には日本の文化的背景が認識され易い環境があると思います。

 積極的に理解しようとしてくにれる人々が沢山いるわけですので、日本人にとっては当然生活しやすく、仲良くなりやすい環境です。私はそんな大連人こそが大連の魅力だと思っています。

学生時代に中国語を学んだ理由

 1992年入社した当時は、中国語を学ぶ日本人は現在のように多くありませんでした。私は父親が台湾で働いていた関係で中華圏に関心を持ち、中国語を学んでおいた方が良いだろうと考え、大学在学中に大連の遼寧師範大学に語学留学をしました。

日本航空に入社した理由

 もともと「金もうけ」というよりも「世のため人のためになる仕事」がしたいと考えていました。公共性を持つ地方公務員や、公共性に加えて国際性を持つ航空業界を目指し、日本航空に縁あって入社することができました。入社した年は既にバブル経済は弾けていたのですが、まだ相当な人数が採用された時代でした。

中国生活で印象的なエピソード

 天津線の開設に関わった事も思い出深いですし、北京で妻と知り合い、香港・北京駐在中に長女と次女が産まれた事も人生において大きな出来事でしたが、エピソードとしては1989年に遼寧師範大学に留学していた頃食べた「三鮮伊面」との再会でしょうか。

 宿舎の近くの小売部に黄色いパッケージのインスタントラーメン「三鮮伊面」が売られていました。当時はとても物が少ない時代で、現在のように豊富なスナック菓子はありませんでした。ですからそれをお菓子代わりに、袋から出した乾麺の上にスープ粉末を振りかけてそのまま食べたものです。

 私自身も30年以上忘れていたのですが、先日ある中国企業を訪問した際、創業者の起業時期を紹介する映像の中に懐かしい黄色い袋が映ったのを見て、突然記憶が呼び起されました。共通の話題となり、初対面にも関わらず旧知のように当時の苦労を語り合う等、打ち解けた雰囲気になり良好な関係を築くことができました。

航空会社で働く魅力を教えてください。

 一口に「航空会社社員」といってもパイロットやCA、整備士や私の様な事務職等、様々な職種がありますので、魅力は職種によって異なると思います。私自身は①公共性が高い②中国語が活用できる(中国駐在の可能性がある)、という2点から航空会社を志望しました。実際に働いて感じる魅力は、効率的に「非日常」をご提供し、ご利用者に喜んで頂ける、という事であるような気がします。私自身も未だに飛行機に乗る際にはワクワクしますし、その様な旅のお手伝いをさせて頂き、お客様に喜んで頂ける、というのは志望動機の①も満たしてくれ、非常にやりがいを持って働くことができています。

大連日本商工会会長としての展望

 今年は日中双方の新型コロナに対する規制の変更によって、各社・各企業が順調に回復していく1年になると思います。商工会としてはそのサポートを行って参ります。またコロナの影響で3年間まともに実施できなかった親睦活動は、多くの会員様ご参加の下、できる限り盛大に実施していきたいです。さらにこれらを通して商工会の魅力を発信し、コロナ影響等で微減傾向にある会員数を回復させたいと思っております。

商工会でのこれまでの取り組み

 日系企業が市との直接対話により意見交換ができる良好な関係の維持に努めて参りました。大連領事事務所のご協力を得て今年は6月に実施された「アカシア懇談会」では、商工会調査企画委員会がまとめたアンケート調査を基に、会員企業様の要望事項を大連市長在席の下、政府・部局へ提起致しております。

 また昨今は、各社・各部局がコロナによる落ち込みからの回復を目指す中で、それぞれのスピード感や思惑が異なる事による問題が生じたりもしています。商工会では、実際に影響を受けた会員企業様と共に政府関係に改善の申し入れを行っています。

仕事で大切にされている信条や信念

 現在のポストにおいては「ムードに流されない」という事でしょうか。ポストが上がるにつれ、より大切な局面での判断や決断を下す機会が増えます。しかし、自分が納得できない要素を含んだまま判断をすると失敗した際に、必ず後に悔やむことになります。

 中国で仕事をする上では「天時、地利、人和」といわれ、タイミングも成功するための非常に重要な要素の1つであると言われます。それらも理解した上で、さらに『ちゃんと思考したか』と自問自答し、きちんと納得してから、判断・決断に繋げるように心がけています。

今後の目標

 大連支店は、航空会社として今までは人とモノの『移動』に価値を求めてきましたが、羽田化で地方都市との繋がりも深まる事で、今後は人とモノの『繋がり』に貢献し、人と人が『繋がる』事で新しい商品が生まれたりする事にも挑戦していき、移動が人の幸せを作る事に貢献して参りたいたいと思います。