
澳深国际贸易(大连)有限公司 董事長
大連澳深餐飲管理有限公司 総経理
大連日本調理師会 副会長
柏 梓梅(Bai・ZiMei) 氏
大連で鮮魚貿易と飲食事業を手がける経営者。2018年に鮮魚店「澳深(オーシャン)」を設立し、新鮮マグロや解体ショーで注目を集める。SNS発信にも積極的で、中国のZ世代から高い人気。大連日本調理師会副会長として、日本食文化の普及にも取り組む。
海鮮丼が大人気で、いつも大行列ですね。開店のきっかけは?
実は澳深は、もともと飲食店ではなく卸業からスタートしました。2018年に日本の鮮魚を輸入する貿易会社「澳深」を立ち上げ、そこから事業を展開しています。コロナ禍で飲食店が営業停止となり、卸の仕事がなくなったときにデリバリーを始めたことが、イートインを始めるきっかけでした。その後口コミで評判が広がり、今では行列のできる海鮮丼のお店へと成長しました。ただ、私自身は“飲食店経営者”というより“魚屋”。これからも魚のプロとして、美味しい鮮魚を届けていきたいと思っています。
日本と関わるようになったきっかけや、飲食業を始められた経緯は?
大学留学で日本語を学んだことがきっかけです。在学中に学生起業として中国物産店を開いたのが最初のビジネスでした。帰国後も貿易業を続けながら、日本人向けのプールバーやビリヤード店を経営。その後、2010年に飲食業を始め、今年で15年目になります。経営だけでなく、日本食文化を大連で広める活動にも力を入れており、大連日本調理師会では積極的に活動し、9月から副会長に就任しました。
魚の卸については、現在何店舗くらいに提供されているのですか?
店舗数は時期によって変動があるため正確な数字はお伝えできませんが、大連では客単価100元を超える日本料理店のほとんどが、当社のお客様だと思います。さらに大連だけでなく、中国全土に鮮魚を届けています。おこがましい言い方かもしれませんが、澳深の取り組みによって中国における日本料理全体の質を底上げできた、という手応えを感じています。
そもそもなぜ魚を扱うようになったのですか?
鮮魚店「澳深(オーシャン)」は2018年に設立しました。日本との貿易や居酒屋・焼肉店経営などの経験を経て、常に「日本の本当に美味しい食材を中国の皆さんに知ってほしい」という思いがありました。なかでも、生のマグロを扱う鮮魚店を開くことは、ずっとやりたかったことです。私は本マグロこそ、日本料理の食材の中で最も美味しいと考えています。
しかし、中国ではマグロは冷凍流通が一般的で、解凍すると味も色も落ちてしまいます。そのため「刺身といえばサーモン」「マグロは美味しくない」という誤解が広まっています。私はこの誤解を解き、本当のマグロのおいしさを広めたいと考えています。
なぜ大連で起業されたのでしょうか?
私は東北人で、昔から沿海都市・大連に憧れがありました。加えて、大連は海鮮資源が豊富で、生魚を食べる文化が根付いています。日本料理店も多く、港町として魚の輸入にも便利な環境。この土地なら自分のやりたいことを形にできると感じ、起業を決意しました。
マグロ解体ショーが有名ですが、始めた目的は?
私たちの目標は、中国の皆さんに本物のマグロのおいしさを知ってもらうこと。そのため、店内で定期的に解体ショーを開催しています。さらに、ホテルのイベントや飲食店など、さまざまな場所に出張して披露することも。上海での中国国際輸入博覧会(CIIE)では、ショーが全国ニュースで紹介され、大きな反響をいただきました。
オーシャンの“灵魂人物”(立役者)、ショーを担当する“解体士”内田は、長年の料理経験を持ち、日本で市場の仲卸としての経験も持ち、高い魚捌きのスキルでマグロを解体します。今後も出張ショーのご依頼をお待ちしています!
この不景気の中でも、行列ができるほどの人気の理由は?
当店の海鮮丼は、単価100元前後と決して安くはありません。しかし、利益率を抑えることで、本当に美味しい高級食材を気軽に楽しめる“コストパフォーマンスの良さ”を実現しています。さらに、映える見た目も若い世代に支持されるポイントです。
中国では景気低迷で消費が落ち込んでいますが、当店のお客様は主に若いZ世代。自分で稼いだお金を、自分の価値観に沿ったものに積極的に使う世代です。そうした彼らの考え方と、当店のスタイルがうまくマッチしたのだと思います。
お米の美味しさも魅力の一つでしょうか。
はい。中国ではあまり知られていませんが、お米も“ナマモノ”で、新鮮なものほど美味しいんです。スーパーで袋から出して量り売りされるお米は空気に触れて酸化してしまいます。そこで、当店では木徳大連様と共同で立ち上げたオリジナルブランド米『澳深魚米』を使用し、店頭で精米して提供しています。もともと、美味しいお刺身に合うお米を探していた中で、木徳様よりご提案いただき、丹東で育てたコシヒカリの玄米を仕入れて、自分たちで店頭精米するのが最良だという結論に至りました。日本の精米機を輸入して設置し店頭やミニアプリからもご購入いただけます。Whenever大連20周年記念ゴルフ大会でも協賛品として提供しましたので、ぜひ一度味わっていただきたいですね。
SNS戦略を重視されていますか。
そうですね。SNSに限らず、私はどんな時代でも壁を乗り越える工夫をしてきたという自負があります。ショート動画がまだ注目される前から積極的に活用し、WeChat公式アカウントやモーメンツでも発信してきました。DOUYINも人気が出る前から使い、動画編集機能を駆使して投稿。当初は快手の方が反響が大きく、DOUYINは難しいかもと思ったのですが、その後DOUYINでバズったときの反響は桁違いでした。どのプラットフォームで当たるかは読めないので、まずはいろいろ試すことをおすすめします。
SNSでバズるコツはありますか。
正直なところ、どんな動画が伸びるかはわかりません。だからこそ大事なのは“継続”だと思います。とにかくコツコツと動画を作り続けること。私は週に4〜5本は投稿すると決めていますが、撮影や編集も苦になりません。日常の延長線上で楽しみながら取り組んでいます。SNSは発信だけでなく、観る側としても楽しんでいて、特にファッション系のライブ配信を観るのが好きですね。そこから服やアクセサリーを購入することも多いです。
お魚のモチーフのアクセサリーを身に付けられていますね。
はい、今は魚ばかり集めています。以前ビリヤード場を経営していた頃は、ビリヤードのボールをあしらったブレスレットを身につけていました。ファッションが好きで、“今の自分”を象徴するモチーフを身につけるのが好きなんです。
大変だったことは?
大変なことだらけですよ!(笑)でも、学生時代から“私は経営者になる”と決めていたので、人の下で働いたことは一度もありません。他人をあまり信用できない性格なので、自分でやりたいと思っていたんです。その性格は経営者に向いていたと思いますし、成果も出せてきました。ただ一方で、経営者である以上は従業員に対して責任があります。コロナ禍ではその責任を果たせない状況に追い込まれ、とても辛かったですね。けれど、そこからスタッフと一緒に考えてデリバリーを始めたことが、今の営業スタイルにつながっています。振り返れば、無駄な経験はひとつもないと実感しています。
辛い時に乗り越える方法は?
誰でもマイナス思考になる時はあると思います。そんな時、私は『自分で選んだ道だ』と自分に言い聞かせます。今は不況の時代で、コロナ後には経済全体の状況も変わりました。私たちのような個人が経済全体を変えることはできません。一人ひとりが、今自分にできることは何かを問い続け、根気強くやるしかないのだと思っています。
やりがいを感じる瞬間は?
同じ目標を持つチームがあると実感した瞬間です。売上の数字ではなく、自分を信じてついてきてくれる仲間の存在を感じられる時、それが私にとっての至福の瞬間です。
今後の目標は?
冒頭でもお伝えした通り、私たちの目標は「本当に美味しい日本料理の食材を、中国の皆さんに知ってもらうこと」です。法律の変更など外的要因の影響もありますが、初心が変わることはありません。これからも仲間たちと共に、美味しいお魚を中国全土に届けていきたいと思っています。






