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インタビュー
2024年7月1日

設立30周年を迎え、更なる高みへ 大連の仲間と目指す世界一の水栓工場

東陶(大連)有限公司 総経理

大連日本商工会 会長

臼井 宏之氏(うすい・ひろゆき)

 1974年生まれ、福岡県出身。九州大学大学院工学研究科卒。1999年、TOTO株式会社に入社し、神奈川県茅ケ崎工場商品研究所へ配属、その後、北九州市で商品開発業務に従事し、2019年に機器水栓開発部長就任。2021年2月、東陶(大連)有限公司董事・総経理に就任し、現在に至る。

東陶(大連)有限公司について

 1994年に設立されたTOTO株式会社(以下、TOTO)のグループ会社で、水栓金具の生産拠点です。水栓金具とはキッチンや洗面所、浴室に使われている蛇口・ハンドル・管等の総称です。水栓金具の製造工程としては鋳造、機械加工、研磨、メッキなどの工程がありますが、大連工場はTOTO中国グループ内で唯一、鋳物から商品の本体まで一貫して水栓が製造できる工場です。近年は自動化設備の導入も進めています。

東陶(大連)有限公司設立の経緯

 親会社であるTOTO株式会社は、衛生陶器の製造販売、システムトイレの製造販売、システムキッチンの製造販売、ユニットバスルームの製造販売、浴室換気暖房乾燥機の製造販売などを主な事業内容とする企業です。

 1994年に、北京東陶有限公司を設立して本格的に衛生陶器の製造に着手しました。同年にホーローバスをつくる工場が南京に設立され、水栓金具をつくる工場として設立されたのが東陶(大連)有限公司(以下、TOTO大連)です。当時は安い人件費と投資環境が良かったことなどが大連を拠点に選んだ理由として挙げられます。

 その後1995年には統括会社である東陶(中国)有限公司と、衛生陶器の新工場として東陶機器(北京)有限公司を設立し、さらに、上海や広州、福建などにも拠点を設立し、事業を拡大してまいりました。

日中の販売比率

 設立当時は日本に水栓金具を輸出する会社でしたが、中国国内に販売会社ができたことや経済発展とともに国内需要が伸びたことを受け、中国市場向けに大連で開発製造を進めることを初め、現在はおよそ70%が中国市場向けとなっています。

中国市場の近況

 日本では衛生陶器のシェアが6割を占めており、幅広い層をターゲットにしておりますが、中国市場においては、アッパーミドル層(公共施設では5つ星ホテル、空港など、住宅でも高級住宅など)をターゲットにしています。

 グローバル事業の中で中国大陸事業は成長ドライバーでしたが、当社グループの昨年の課題の1つに市況低迷の長期化が挙げられており、新築需要の低迷は長期化の様相です。一方で、1線・新1線都市では約1億戸以上など住宅ストックは豊富に存在しています。そこで日本で約30年培ってきたリモデル事業のノウハウも活用しながら、新築からリモデルへのギアチェンジを実行する方針を打ち出しています。人口14億人の大国であり、現在も依然として大きな市場であることは間違いありません。

日系企業が大連に拠点を置くメリット

 当社の設立当時の90年代と比べると、人件費も上がってきていて、コスト面でのメリットはなくなってきてはいますが、依然として日本語人材は他地域より強いですし、大連日本商工会のような日系企業をサポートする組織もありますので、日系企業が進出しやすい環境だと思います。

大連に赴任するまで

 私は入社からずっと商品開発に携わってきました。大連に赴任する直前は開発部の部長でした。入社して一番最初は研究所で研究を3年間やっていたのですが、よりお客様に近い商品開発を希望して、20年以上商品開発を続けてきました。

入社を決めた理由、会社の魅力

 私の地元北九州市では有名な会社であり、また水回りの商品という、身近で毎日触れる機会のあるものを作っていることに魅力を感じたからです。誠実な会社であり、自社商品を誇りに思う社員が多いです。私自身も家を建てた時にはTOTOの商品を設置しました。全ての商品に、品質にこだわるTOTOのDNAが受け継がれており、お客様はもちろんのこと家族や友人にも自信を持って勧めることができます。これは当社の素晴らしいところだと感じています。

今まで開発した中で思い入れのある商品

 色々ありますが、例えば申貿ビルのお手洗いのハンドドライヤーは、私がチームリーダーの時に開発した機種を使って頂いています。自分が設計開発したものが使われているのを見ることができるのは嬉しいものです。TOTOは商品が生活の身近なところにあるので、開発者としてモチベーション高く働くことができます。

開発の仕事の大変さ

 不確実性の高さが大変な点かもしれません。どんな仕事にも納期がありますが、商品開発は「この方法でやれば、必ず納期までに完成する」ということがほとんどありません。元々の商品企画を変える必要があることさえあります。商品は発売日が既に決まっているので、不具合があろうとそれを解決して、納期までに商品を完成させなければいけません。決して楽な仕事ではありませんが、やりがいはあります。

印象に残った仕事

 商品の子ども向け検証に、当時幼稚園児だった私の子どもを連れていったことがあります。我が子に「この前やってもらった商品が発売されたよ!」と伝えられたのは嬉しかったですし、自分の仕事を実際に見てもらい、伝えることができたのはいい経験でした。

大連に赴任してから

 現在の総経理という職位は、会社全体を統括する仕事ですので、これまでの開発の仕事とは全く内容が異なります。総経理としては、コミュニケーション、社員を守るということを大切にしています。大連を含め中国の拠点では社内イベントも多く皆さんが積極的に参加してくださり、社員同士のコミュニケーションが多く良い文化だと感じています。

環境保護、SDGsなどに関する取り組み

 当社グループは、2050年の持続可能な社会、カーボンニュートラルの実現に貢献し、すべての人に健康で快適な暮らしを提供することを目指しています。それに向け、2021年度から10年間の共通価値創造戦略「TOTO WILL2030」を策定しました。これは経済価値と社会的・環境価値向上を目指した長期視点の経営計画で、取り組みによって「持続可能な開発目標(SDGs)」にも貢献していこうというものです。

 WILL2030の実現に貢献すべく、TOTO大連でも取り組みを行っています。環境貢献できるかつ綺麗で快適に過ごせる商品を「サステナブルプロダクツ」と定義しますが、これらの商品比率を上げていくべく、大連工場で節水シャワー、節水水栓などの商品企画や商品開発を行っています。また省エネ設備への投資、節電活動などを行っていますし、工場自体の競争力を上げていくために生産性の向上などにも取り組んでおります。 

大連での地域貢献活動

 定期的に工場の周りの清掃活動、北海公園の清掃を有志で行っています。そのほか、TOTOグループ全体で行っているのが「水環境基金」です。これは水資源に関わる環境貢献活動を行っている団体などを助成するもので、大連では大連理工大学の学生に助成金を出しています。

大連日本商工会の活動について

 4月より今期の会長に就任いたしました。昨年はコロナが明け、柴田前会長を始めとする皆様の尽力があり、市政府との交流が強化され、会員交流イベントも通常通り開催された一年でした。この度会長のバトンを受け継いだ今年も、日系企業の皆様が大連の地で安心して事業活動を行い、発展していき、投資していく環境作りに貢献できるよう、一層活動をさらに強化していきたいと考えております。

会長として強化したい取り組み

 市政府との対話、交流をより深めていきます。また会員向けのイベントでは懇親会やゴルフ大会などの交流の機会を一つ一つ大切にしていきます。去年からは賛助会員の入会も始まりましたし、皆様にネットワークを広げていただき、企業同士の交流だけではなく、プライベートの充実にもつながるようなプラットフォームにできればと考えています。

休日の過ごし方

 ランニングが趣味で、時間がある時は10キロメートルから20キロメートルほど走ります。開発区の海岸沿いまで走ることが多いですが、海を見ながら走れるのは大連のいいところですよね。大連に来てから始めたゴルフも、月に約2回のペースでプレーをしています。食事の席以外で親睦を深められるゴルフは始めてよかったと思っています。冬は寒く困っているので、オススメの過ごし方があれば教えてください。

仕事で大切にしている考え方

 大切にしている言葉は「人事を尽くして天命を待つ」です。仕事は困難なこと、うまくいかないこと、自分の未熟さを感じることが多いですが、そんな時は自分ができることを全てやったのかやり尽くしたのかどうかを、自分に問うようにしています。

 もう一つは「感謝の気持ちを大切にすること」です。特に総経理になってからは、私自身では実務をしないため、成績を作り出してくださっている現場の皆さんに感謝しており、一人一人が大切なメンバーであるとより強く感じるようになりました。

今後の目標

 工場のビジョンは「世界一の水栓工場になること」です。何が世界一という定義は難しいのですが、信頼、安心の品質の商品が提供できること、工場の安全、規律、商品の品質、供給面も含め、全ての総合的なお客様が必要とする価値において世界一を提供できる会社になることだと考えています。多くの皆様に「やっぱりTOTOが一番だね!」と言って頂ける会社になれるよう尽力してまいります。